『イセリーナの夜明け』――志は、受け継がれていく。

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概要

 作者は、「◆rnVQLHXf7Q」さん。加筆を「Yoshi」。
 かつて、アースよりやってきた、英雄ウォダ――。
 その孫であるレインは、剣術に関しては落ちこぼれであった。しかし、ウォダの志は、彼に受け継がれており、レインの想いはその子孫に受け継がれていく。
 世代を越え、成長し続けるノヴァラ氏族を描いた作品。

登場人物

■レイン・レイヴナント
 ……ノヴァラ氏族。カオスであるアルン・レイヴナントを父に持つ。剣術が苦手。
■セリカ
 ……ノヴァラ氏族の女性。レインに密かに想いを寄せる。
■グラン
 ……ノヴァラ氏族の男。レインの剣の師匠であり、セリカの父。
■アルン・レイヴナント
 ……レインの父。名誉の戦死を遂げた、一族の英雄。ウォダの子であり、カオスである。

イセリーナの夜明け


1.

 孤高の防人ノヴァラ。 神話期の混沌から世界を救った十七英雄の一人に数えられ、己の剣のみを頼りに生涯を戦いに捧げた、剣聖と呼ばれた救世の英雄である。その加護を受け、彼の名と意思を継いだノヴァラの氏族は、代々剣を尊び、その技を磨いてきた。
 それから千年あまり経ち、そのノヴァラ氏族の住まうイセリーナの森を“災厄”が襲ったことはまだ口伝で語られている。そう、五十年前の悲劇――邪竜エビルの襲撃。

 当時、ノヴァラ氏族でも最強の戦士アルン・レイヴナントでさえ、かの邪悪なる大敵の前に成す術もなく散って行った。ノヴァラ氏族の誰もが諦観を抱いたそのとき、英雄は現れた。
 伝説の剣豪ウォダ。異世界アースより来訪した気高きヒュマン。彼の活躍により、エビルは見事討ち取られ、彼はイセリーナの英雄となった。ノヴァラ氏族の民は彼を快く氏族の一員として受け入れたのだった。
 ウォダはアースに伝わる“カタナ”を用いた剣術をイセリーナに広め、以後はその剣術がノヴァラ氏族の基礎を築くことになるのだった。そのウォダはやがて、ノヴァラ氏族の娘を嫁にもらい、子を授かる。彼の伴侶となったのは、リリー・レイヴナント。かつて、邪竜エビルと闘い散って行ったノヴァラ氏族の勇者アルン・レイヴナントの妹である。
 ウォダは、レイヴナントの家を継ぎ、その名をウォダ・レイヴナントと改めた。そして、ウォダとリリーの間に授けられた子には、かつての勇ましきノヴァラ氏族の戦士アルンの名をつけた。

 ――アルン・レイヴナント。
 ヒュマンとファルンの間に生まれたカオスの名前であり、ウォダの唯一の跡取りである。
 カオスの持つ能力は凄まじい。その力の強大さ故に道を踏み誤る者もカオスには少なくはない。しかし、アルンは道を踏み外すことなく成長し、やがて、父親となった。彼は妻をもうけ、夫婦の間にはまた、子が生まれた。
 生きた伝説のウォダはその孫の誕生と同時期くらいに病に伏し、そして急逝したと言う。だが、その血筋は、その猛き心は子々孫々と受け継がれていく――子の名前は、レイン。レイヴナント家の正当なる後継者である。
 ゆえにレインはサラブレッドとして、全ての族人から将来を嘱望されていた。しかし、絶対数の少なかったカオスの子供に関して、このとき初めて明るみになった事実があった。カオスとファルンの子供は、カオスにはなれない。レインは普通のファルンであったのだった。
 このことはまだ幸いだったかもしれない。まだ、ハーフではなかったのだから、絶対的に劣っているわけではないのだ。後の世の研究でわかることになるが、カオスの子は、その身体に流れる氏族の血のどれかの性質を持つという。すなわち、レインは純粋なノヴァラ氏族の血をもって性質を受け継いだのだった。
 それでも、人々は思っていた。誇り高き一族の血筋なのだから、ファルンであるレインも父親のアルンには敵わないと言えども、名のある剣士になるのだと。だが、レインは成長するにつれて、次第に周りから取り残されていった。レインは剣の素質を全く有していなかったのである。
 ノヴァラ氏族の序列はその剣技の巧みさによって決定されると言っても過言ではない。それほどまでに、彼らの剣に対する信仰は厚いのだ。
 それでもレインの親アルンは世代の勇者であり、族人の誇りである。アルンの妻もまた、ノヴァラの誇り高き戦士であった。それに加えて、祖父であるウォダは伝説にまで昇華された英雄である。表立っては、誰もレインの不才を謗るものはなかった。

 しかし、レインが十歳の頃、レインの両親は共に戦場で命を落としてしまった。
 部下を守るために、共に盾となって敵陣へ消えていったのだという。敵陣の中心にいた者もまた、カオスであった。唯一の救いは、強敵であった相手のカオスも共に果てたことだった。結果的に、イセリーナは守られたのであった。
 しかし、その時からレインを取り巻く環境は変化した。親の威光を失ったレインに、周囲は徐々に、ゆっくりだが確実に遠慮をしなくなって行く。
 何よりも剣を尊ぶノヴァラの族人にあって、剣が扱えないレインは嘲笑の的となったのである。
「あいつ、こないだ女にも負けたらしいぜ」
「ああ、俺は五つも下のガキにやられたって聞いたよ」
「あいつだったら、家の犬でも勝てるだろうよ」
 周りから笑い声が響く。
「気にする事ないよ。誰にでも苦手な事はある。レインはたまたま、それが剣術だったってだけで……」
 幼馴染の少女はレインに声を掛けた。少女の憂いを含んだ瞳はノヴァラ氏族にもっとも多い黒で、神秘的な輝きを持っていた。 頬は淡い薔薇色で、白い肌を愛らしく彩る。肩まで伸びた美しい黒髪からは花の香りがする。
 少女の名はセリカ。レインの幼馴染で、レインと一つ屋根の下で暮らす娘であった。
「……いいよ、分かってる」
 心配顔のセリカに向かい、レインは優しく微笑み返した。
 強がりではない純粋な微笑みだからこそ、セリカは胸が締め付けられて、言葉を詰まらせる。セリカにはそのまま口を結ぶ事しか出来なかった。

 セリカの父は名をグランといい、レインの両親とは親友であり、また戦友でもあった。
 かつては戦場で腕を競い合った仲であったが、グランは常にレインの父に遅れを取っていた。相手がカオスなのだからそれも致し方ない。ならば、グランは自分にできることをしようと思った。レインの両親が戦場で活躍をするのであれば、自らはそれを支える力となろう。
 自分は優秀な剣士を育て上げて、彼らの活躍を助けようではないか。そう考えて、グランは後輩の育成を行っていくことを心に決めたのであった。
 レインの両親はグランが戦場の第一線を退くのを惜しんだが、同時に反面、グランほど優れた指導者はいないと安心もしたのである。以降、グランはノヴァラの氏族が形成する村で剣術師範を務めることとなり、数多のノヴァラの剣士を育て上げてきた。
 レインが生まれると、遠征で不在になりがちなレインの両親に代わって、グランがレインの養育者となり、レインは少し年下のセリカと共に育てられることとなった。グランは我が子のようにレインを扱った。厳しく、優しく、決して甘やかさず、大切に。
 だが、レインの両親は戦場で散ってしまった。

 グランは修練所へと集まる子弟たちの中でも、特にレインには目を掛けていたが、それからは更にレインに期待を掛けるようになっていった。何としてもレインを一人前のノヴァラの剣士に育て上げたい。両親に負けぬ立派な男へと。それが亡き親友への弔いとなるだろう──そう考えて。
 しかし、レインはその期待に応える事が出来なかった。背も伸びず、腕力も同士のそれと比べて心もとない。そして、剣術の方もからっきしである。
 血に恵まれ、師に恵まれ、それでもその剣の腕は児戯に等しく、そのことが周囲の苛立ちを誘ったのかも知れない。
 グランが誰よりも熱心に指導するところが、周囲には依怙贔屓に映ったのかも知れない。年を重ね、周囲との実力の差が開くに従って、その中傷はより深い場所を抉る刃となった。
「女に庇われるチビ」
「すばしっこいだけのコクレイ(※小さなウサギ状のモンスター)」
「何を言われても愛想笑いを浮かべる軟弱者」
 挙句には、ウォダの血を引いていないのでは、とまで言われるようになっていた。
「お前には素質がある。体は小さいが俊敏だ。頭も悪くない。それなのに、なぜ剣を持たせると、子供にすら負けてしまうのだ……」
 修練所の中で大粒の汗を滴らせるレインを見つめながら、グランは悩んだ。レインは決して愚鈍ではない。寧ろ、同年代の誰よりも光る何かを持っている。
 それは真面目なところであったり、勤勉なところであったり、優しい心であったり、様々な部分に滲み出ているのだが、それだけではない何かを感じさせる。だが、それが分からない。
「おれには父や母のような才能はありません。おじさんの気持ちはありがたいのですが、おれは剣で生きるには向いていないようです。おれはおれに出来ることで、皆の役に立っていきたいです」
「お前にできること、か……」
「もっとも、それが何かはまだわからないんですけど、今はこの剣を磨くことで、自分のうちを見つめなおしていきます。何もしないよりはましだから」
 レインはグランに与えられた鍛錬を積みながら、そう答えた。
 人々の営みが遠雷のように修練所にこだました。格子窓から差し込む光の中で、レインの黒髪がつややかに揺れる。
 不器用ながらも懸命に与えられた課題をこなそうとするレインの姿を、グランはただ見守る事しか出来なかった──。


2.

 無数の星が見渡す限りに輝く黒い天幕に、湾曲した月の刀が掛けられた深夜、山林の奥から荒い呼吸音が聞こえた。元々、人が来るような場所ではない。
 昼間であっても、猟師ですら足を運ぶことのない深く険しい山である。ただ、神聖な「ゲンプクの儀」にだけ使われる神聖なる、ノヴァラ氏族の秘境。
 かつては神獣の棲み処として、霊山とも称された場所であるが、神代が終わりを告げた今はその面影もない。魑魅魍魎が跋扈する、危険に満ちた山──シュラ山。その頂に、ひとつの塔が聳え立つ。ノヴァラ氏族が成人を迎えるには、その塔を頂上まで上って運命の水晶に触れてくる必要がある。
 己の力である剣のみを片手に上ることから、人々はそこを「剣の塔」と呼んだ。
 その山道に一つの影が動いていた。短く息を吐き出す音、枯れ木を踏み割る音、木々の枝葉を揺らす音。瞬く間に、起伏の激しい道なき道を駆け抜ける影──影が崖の上まで駆け登ると、月明かりに一人の男が照らし出された。
 男は一気に息を吐き出して、天を仰いで深呼吸をする。全身から汗が飛び散り、月明かりに反射した。男は短身で、小柄な体を上下に揺らしている。男はきつく目を瞑り、呼吸を整えた。男の黒髪が風に棚引く。
 ゆっくりと男の瞼が開かれると、夜の空の静けさを思わせる黒瞳が現れた。瞳は深い知性と意思の光を力強く輝かせる。男はじっと月をにらみつけた。
 真夜中に人知れず山を駆け抜けていた男は、試練を明日へと迎えようとする十五歳にさしかかったレインであった。
 ここに来るのは今日だけではない。レインは自分を取り残して先へと進んで行く同胞たちに少しでも追いつくため、夜を通して肉体を苛め抜いていた。
 険しい山中を疾走し、足腰と敏捷さを鍛える。才能のない人間には、そうする他何もない。レインはただそれを愚直に繰り返すだけだった。

 レインは武芸に自信がないわけではない。お互い素手であれば、おそらくレインはノヴァラの若者の中でも遅れを取る事はないだろう。
 だが、それは戦いにおいて、何の意味ももたらさない。同じ条件下で力や技を争う"競技"とは違う。戦いとは、勝つ事なのだ。そしてノヴァラの民は剣を持って戦い、勝利することに意義を見出すのである。
 どんなに力を持ち、敏捷性に優れ、一瞬の判断力に長けていても、レインは剣を持つと、最も重要な感覚が分からなくなってしまう。
 背負っていた剣を抜いて見る。
 ──剣が長すぎるのだ。そう思わずにはいられなかった。
 レインは崖の下を見下ろした。そこからはイセリーナの数ある集落のひとつ、レインの住まうマイス集落を眺める事が出来た。
 星明りと月明かりに大地が白く照らされて、家々が小さく見える。
「…………」
 レインの胸に去来したものは何であろうか。ふと、足音が聞こえた。レインには足音の主の正体がわかっていた。
「セリカか」
「眠れないの、レイン? 無理ないか、明日だもんね」
「そういうわけじゃないんだけど……」
「ふふ。知ってる。毎日、ここで剣の練習してるんだよね」
 レインはそっぽを向いた。
 少し肌寒い空気が辺りを包んでいる。静寂は風の音を運び、風はレインの汗ばんだ体を乾かしていく。
「私は、今のノヴァラ氏族が間違ってるって思う。剣しか信じないっていうのが、そもそも変だよ。アルンは徒手空拳も強いのに」
「だって、実際に剣は強いよ。僕が素手だったら、絶対に負ける」
「そうかな? 試したことあるの?」
「前に稽古でやってみた。でも、だめだったよ」
 セリカはマイス集落を見下ろせる小坂に腰を下ろした。レインもその隣に座る。
「前のことじゃない。今は違うと思うよ。いつもこっそり見ていたから、私はわかる」
「拳だけじゃ、何もできないよ」
「色々と組み合わせたらいいと思う。剣しか見てない人たちはそれを見て最初のうちは受けいれられないけれど、ステップ踏んでいけば大丈夫だろうってお父さんが」
「グラン師匠が?」
 頷き、セリカは自分の背後、腰の部分に手を入れてごそごそとやり始めたところで、レインは素早く立ち上がった。
「レイン、これ!」
 殺気を孕んだ気配にセリカも気づいていた。セリカが放り投げた小さな細長いケースを開けると、中から剣の三分の一ほどの大きさの刃物が二振り出て来た。
 それは、ダガーをベースに改良されたものだった。ノヴァラ氏族の中でこれを扱うものはいないだろう。何よりも、間合いの距離、威力の双方において剣に劣る。
 しかし、レインはダガーを両手に軽く握り締めた。
 瞳を閉じ、心臓三拍の間、レインは神経を研ぎ澄ませる。それから更に心臓が十の鼓動を刻むと、レインは手にある感触を確かめた。
 そして開眼──素早く地面を踏み込むと、相手の懐まで飛び込んでいく。そして、一閃。
「グオオオオオオオオオ」
 肉が貫かれる鈍い音と共に絶叫が響いた。
 繰り出された槍の先には、大きな猿のような人型の獣がいた。このあたりでは比較的よく見られるバッバーであるが、気性が激しく腕力が凄まじい。まだ少年のうちはシュラ山に近づくなと言われるのはこういった魔物がうようよしているが故である。
「グオオ……ウガガガガ」
 バッバーは断末魔を残して、この世を去った。
 ──このダガーであれば。
「……俺も皆の役に立てるのに」
 だが、ノヴァラの民はダガー使いなど認めない。
 誇り高き剣の民ゆえ、である。剣が最も優れていると考えるが故である。だからこそ、その名も「剣の塔」なのである。
 レインは山頂に聳え立つ塔を見つめた。
「明日のゲンプクの試練。それでクリアしてみたらどうだって、お父さんが言ってた。アイディアが閃くのと、その業物を調達するの時間がかかったからこんなタイミングになっちゃったけど」
 レインは驚きの表情でセリカを見つめる。
「あ、すぐ明日のことだもんね。無理だよね……」
 違う。レインの気持ちはそんなところには向いていなかった。
「そんなことができるのか!」
「剣でないと駄目だっていう決まりはないらしいよ。お父さんが言っていたんだけど、元をたどれば、試練が困難すぎて、優秀な剣と、優秀な剣士じゃないとクリアできないとされているだけなんだって」
「そう、だったのか……」
「うん。もっと早くわかればよかったんだけど、もう明日だしね……」
 肩を落とすセリカに、レインは目を輝かせて言った。
「才能がなければ、努力をするしかない」
 レインは早速、素振りを始めた。セリカはじっとそれを見つめ続けた。
 最初のうちは鈍かった太刀筋も徐々に鋭くなっていく。やはり、レインは天才なんだとセリカは感じた。
 彼は剣の才能だけが抜け落ちていて、あとは全てを持っている。いや、持っていないのかもしれない。レインは剣の才を補うべく他の全てを努力で特化した。彼は、努力をする才を持っているのだ。
「迷うことはないよ、レイン。あなたはノヴァラ氏族。そこに新しい道を作るのよ」
 レインにその声は届いていないようだった。彼は集中してダガーを振るい続けた。明日のゲンプクの儀に向けて――。
 彼こそが、ノヴァラ氏族を剣という枠に捕らわれることなく、ありとあらゆる武芸に秀でた達人の一族へと導く、ノヴァラ氏族の歴史を変えるきっかけとなるのだった。しかし、今の彼はそれに気づくことはない。明日の試練への想いでいっぱいなのだった――……


3.

 そして――四百年あまりのときが流れる。
 しかし、シュラ山の景色は変わらないままだった。

「たく……試練とかうっぜぇな」
「何を言ってるのよ、シャイン! ゲンプクの儀をクリアしなきゃ大人になれないんだからね。この小便小僧!」
 シャインと呼ばれた黒髪をぼさぼさにした齢十五の少年は、顔を真っ赤にして反論する。
「ばかやろう! オレは漏らさねぇよ! あれは昔の話だ、昔の!」
 少女はくすくすと笑う。
「じゃあ、私はここまで」
「なんだ、ピティ。オレのことが心配じゃないのかよ」
「あとは一人で行ってらっしゃい。あんたならちょちょいのちょいで終るでしょ」
 シャインはにやっと笑うと、腰の得物を取り出した。これはダガーを元に制作された、ノヴァラ氏族オリジナルの武器である。小太刀とも呼ばれている。
「へっ。よくわかってるじゃないか。シャイン・レイヴナント様にとっちゃこんなの朝飯前よ!」
 シャインは小太刀を両手に駆け出した。その目前にはバッバーが立ちはだかっていた。
 そのバッバーなど視界に入っていないかのような勢いでスピードを緩めることなく彼は、剣の塔へと駆けていく。バッバーとぶつかるかと思った瞬間、シャインはバッバーの脇をすり抜け走り去っていく。
 バッバーはしばらく突っ立っていたが、そのまま前のめりに倒れた。すれ違う合間にすでに止めをさしていたのだろう。
「さすがは、腐ってもレイヴナント家の血ねー。剣豪ウォダ、剣聖アルン、鬼才レインの子孫だわ」
 ピティは微笑み、くるりと踵を返す。下った先にはマイス集落が見えている。
 今まで数々の危険や災厄に襲われてきたが、その度に立ち上がったレイヴナント一族の功績によって今日まで続いている由緒正しきノヴァラ氏族の集落。イセリーナの中でも最も歴史ある集落である。
 そんな先人たちの血筋は確かに、今も受け継がれているのであった。


 『イセリーナの夜明け』――完。


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