神獣信仰とアガレス教
神獣信仰
混沌の中で世界は創造主たちの力によって生まれた。この混沌はそれでもなお、マナとしてこの世界に残った。
多すぎるマナは世界に影響を及ぼす。創造主たちはその制御するシステムとして、自身の血肉から17の神獣を創生し、それらに世界を統率する役目を与えた。17神獣とは言い換えると、神そのものである。この17神獣が自身をサポートするものとして数多くの従者を作り出したのが、聖獣である。彼らは自然界に溶け込んで、それぞれの力で世界のために働きかけている。
この17神獣は人類を愛した。17それぞれが世界各地に均等に散らばり、身を守る術を持たない人々を直接的に守護する存在となる。彼らに寄り添うようにして暮らす一族は、神獣の名を冠した「17神族」として細々と暮らしていた。この当時には、各集落ごとに自分自身の一族を守る神獣のみを信仰する「神獣信仰」が主流であった。
アガレス教
やがて時代は流れ、マナ戦争が勃発する。大魔王と神獣は相討ちし、神獣の力はそれぞれの一族に引き継がれた。神獣の力はマナ戦争の最期の闘いを共にした、それぞれの一族の長が最初に引き継いだと言われている。
神獣はその最期に「これからは人の力で生きていくのだ」と伝えたとされている。17神族は、神々と共に闘った戦士たちの名を一族の名称に改め、呼称も「神族」ではなく「氏族」とした。そして、集落ごとの生活ではなく、全部の氏足で協力し合って生きていくようになる。これが人の世の始まりであるが、神獣の消滅とともに神獣信仰は形を変える。今までは、自分の一族を守る神獣のみを信仰する「神獣信仰」だったものを、散って行った17の神獣すべてを一つの「神」と捉えて信仰をするという形を取り始める。
この教義を率先したのが、神獣アガレスの名を戴きし、始祖アガレス。神獣アガレスは17神獣の中でも創造主の遺した力がもっとも強かったらしく、神獣内での信望も篤かった。始祖アガレスは、神獣アガレスの力をその身に直接的に継いだらしく、従って、彼女を生き神とみなす人々も多かった。
彼女は、教義こそ大事だとは考えこそすれども、信仰に名をつけることを良しとしなかった。しかし、人々は自ずとその信仰の名を彼女の名から「アガレス教」と呼ぶようになった。今ではファルネースに伝わる宗教はアガレス教のみである。
しかし、例外的に小さな信仰のようなものは稀に存在する。例としてウチナー氏族の海への信仰や、サウル氏族の星への信仰などが挙げられる。
17神獣
神獣モロク(キディルアナ氏族)
始祖キディルアナに力を与えたとされる神獣。月の神とも霊界の番人とも言われる。死を司るとされ、故に、彼女の末裔は「闇の末裔」と呼ばれることも多々ある。
この世ならざる住人、幻獣を操る能力がキディルアナ氏族にあるのはモロクの力を受け継いだが故である。
神獣ユグリル(メイズ氏族)
始祖メイズに力を与えたとされる神獣。森を愛し、森の精とも呼ばれた。
今でもメイズ氏族は森に行くと、ユグリルの声が聞こえるのだという噂がある。
神獣ウェルトリア(サウル氏族)
始祖サウルに星読みの力を与えた神獣。星から導かれるあらゆる事象を読み取るのみならず、星の動きさえ操ったと言われている。そこから転じて気象を操ることもできた。
ウェルトリアから始祖サウルへ、そしてその子孫へ受け継がれるにつれてその力は弱まってしまったが、今でもサウル氏族は占星術や気象学に通じている。
神獣ライオネック(アルルク氏族)
始祖アルルクに力を与えたとされる神獣。集落に降りて、人々に混じって騒いでいたというが定かではない。
アルルク氏族は年に一度、そのときの名残で宴を開く。奇妙な装飾のなされた仮面を被り、一晩中、騒ぎ明かす。その中にライオネックが混ざっている、というのがアルルク氏族の昔からの言い伝えである。また、彼らは仮面を一年中かぶらない代わり、身体のどこかに奇妙な文様の刺青を入れなければならないというしきたりがある。
神獣シャフラ(アーディル氏族)
始祖アーディルに商いの道を説いた神獣。機知に富み、如何にすれば誰も彼もが儲かることを考えていた。
砂漠に流れた涙がオアシスとなり、今もその伝承が残っている。
神獣ハマー(トグル氏族)
始祖トグルに力を与えたとされる神獣。鋼のように硬い身体と意思を持っていた。
無骨な外見とは裏腹に器用な手指を持っており、始祖トグルに金属を加工する技術を与え、物を作る喜びを教えた。
神獣レアニール(ミュンメイ氏族)
始祖ミュンメイに力を与えた神獣。温厚な性格ではあるが、ひとたび怒ると手がつけられないほど凶悪であった。その目は真紅で、燃える炎のような色を湛えていたという。
その真紅の瞳は始祖ミュンメイに受け継がれ、以後は代々ミュンメイ氏族の長に引き継がれている。
神獣フェア(ユシアナ氏族)
始祖ユシアナに力を与えた神獣。翼のある馬の姿をしていた。風と共に現れ、風と共に去ったと言う。
これとよく似た、翼のある馬がユジスタンの森で極稀に見かけられるが、彼らは神獣フェアの眷属である。いわゆる聖獣の一種であるが、ヒュマンが「ペガサス」と口にしたことから、以後はペガサスと呼ばれている。
神獣ムーファ(ファレッタ氏族)
その身の一部を使って、始祖ファレッタを生み出したと言われる。ムーファと同様の白い耳や尻尾がその際に始祖ファレッタに引き継がれた。
後の大戦の際に正式にその力を始祖ファレッタに与え、ファレッタは正当なムーファの後継者となった。元々、神獣の肉体の一部から生まれ出たため、始祖ファレッタの子孫は代々、身体の耳と尻尾に獣の一部を有していると言う。それが何の動物かは生まれてみないことにはわからない。
神獣アベリア(フェヴアル氏族)
始祖フェヴアルに力を与えたとされる神獣。竜の形態をとっており、司るは冷静さであり、氷のマナであった。
マナのもっとも冷たい北の地を守護し、温泉を後の世に残すことで彼がいなくなった後でもマナの調整ができるようにした。神獣の名前は今でも地名として残り続けている。
神獣ヴェリ(ヴェルシア氏族)
始祖ヴェルシアはこの世に生を受けたとき、美の神獣ヴェリの名前からヴェルシアとつけられた。
人・物を問わず愛し、争い事とは無関係に楽天的なヴェリは、神獣ヴェリと同様に、ひとたび愛したものを守る事については一切の妥協を許さなかった。ヴェルシア氏族はそれ故に、愛に生きて愛に死ぬことも少なくなかったと言う。
現在も、神獣ヴェリの名前はノルダニア大陸の国名となって伝わっている。
神獣バンドネオン(ウィス氏族)
始祖ウィスに力を与えたとされる神獣。紫色の瞳、漆黒の鱗を持つ超大蛇であり、頭の回転が限りなく速かったと言う。
バンドネオンはかつて、毒の大地に住んでおり、そこに住む人々に毒から身を守る術として、灰色の硬い皮膚を与えた。やがて、毒の大地がなくなっても、その名残でウィス氏族の肌は灰色のままであり、毒素に強い体質を持っている。
神獣クオリティ(ウチナー氏族)
神獣の中でも、マナを分解し、完全に無に帰すという能力を有していた。
クオリティが健在だった頃はゲートの頻度は今ほど多くはなかったと言われている。マナが濃くなるとクオリティがそれを無に帰していたからだ。かつて、ヒーチャというヒュマンを見込み、共にすべてにつながる海の中心から増えすぎたマナの浄化を行っていたとヒーチャリア王国には伝わっている。
ヒーチャ自身はアースにいた頃から、沖縄のユタ(巫女のようなもの)であり、不思議な力を持っていた。その名残で、海や水と関わり深い能力を持っていたとされ、また水鏡を用いた予言なども行なったという。
神獣シュラ(ノヴァラ氏族)
剣の塔に住んでいたとされる神獣。強い信念を持つ者の運命を導いた。
聖獣クェンアを番人とし、周囲の森の管理をさせており、自身は滅多に外界に干渉しようとはしなかった。
シュラは争いを好まず、攻撃のための力を持たない。故に、攻める力よりも守る力を人々に与える働きをしていた。始祖ノヴァラに守ることの尊さを説いた。
神獣アガレス(アガレス氏族)
始祖アガレスに力を与えた神獣。光を司り、すべての神獣の代表格であった。始祖もそうであるが、彼女の部族は代々、長となる者が神獣アガレスの名を受け継ぐのが慣わしとなっている。その慣習は今でも続き、アガレス教の最高司祭にはアガレスの名が冠される。
また、代表であった神獣アガレスの名を取って、聖都アガレス、アガレス教、アガレス暦など、この神獣の名称は世界的にかなり知名度が高い。
神獣ディウス(ケルト氏族)
始祖ケルトにカリスマ性と寛大さ、威厳を説いた神獣。大地と共にあり、故に、地上に住まう人にもっとも親しいと言われている。
始祖ケルトはそのカリスマ性を生かして、後に氏族間の仲を取り持つ盟主となったと言う。始祖アガレスはその補佐をしていたと伝わっている。
神獣ウォルカーン(ラグルド氏族)
始祖ラグルドに力を与えたとされる神獣。先の神話のマナ戦争ではいち早く大魔王の襲来を予見した。17全ての神獣の中でもっともファルネースを愛し、ファルネースの“自然”を守り続けた神獣である。自然とは、大地など文字通りの自然では無く、ファルネースがあるべき姿であることを言う。
故に彼の力を受け継いだラグルド氏族はファルネースに無かった存在であるヒュマンやカオスを疎む。