31.「あきらめましょう」
『財布落とした』
「え？」
『ああ……カード類とかの解約が面倒臭い』
「あーきらめましょー、あきらめましょー♪」
『諦め切れるか』
「あーきらめましょー、あきらめましょー♪」
『その歌やめろ』
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
32.「宝探し」
「君にとって宝物って何？」
『金』
「現実的だね」
『じゃあお前にとっての宝物は何なんだ？』
「お金」
『現実的だな』
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
33.「秘密基地」
「秘密基地って子供の頃に作ったりしたよね」
『ああ、よくやったな』
「秘密基地をばらす人とかいたよね」
『お前、ばらすタイプだったろ？』
「人聞き悪いなぁ」
『ごめん』
「いや実際、ばらしてたけど」
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
34.「平行線」
『約束通り、おごってくれるんだろうな？』
「何も約束なんかしてないよ？」
『次の週はおごるって先週言ったじゃないか』
「言ってないよ」
『言っただろ』
「ごめん、覚えてないから無効」
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
35.「そぅっと覗いてみてごらん」
「そっと覗いてみてごらんーメダカがお遊戯しているよ♪」
『メダカの学校の唄か、懐かしいな』
「この唄ってさ」
『なんだ？』
「メダカは泳いでるだけだよね」
『まぁそうなんだが、この唄はメダカのそんなほのぼのとした姿にだな』
「うんうん」
『やっぱ面倒だからいいや』
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
36.「わたがし」
「わたがしが好きなんだ」
『そうか』
「わたあめも好きなんだ」
『一緒だろ』
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
37.「見えないもの 見えないはずのもの」
『俺がトイレ行く前、焼き鳥三本あったよな？』
「二本だったよ」
『三本頼んで一本も食べてないはずなんだが』
「思い違いじゃない？」
『そんなはずない、三本あったはずだ』
「幻だよ」
『右手に隠してる串は何だ？』
「幻だよ」
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
38.「本能に従え」
『お前は何故いつも、お金がないのに注文するんだ？』
「お腹減ってたから」
『お前は何故いつも、俺の頼んだ物を横取りするんだ？』
「お腹減ってたから」
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
39.「ダブルベッド」
「広々と寝たいからダブルベッド買おうと思うんだ」
『今使ってるベッドはシングルベッドか？』
「それを処分して新しいのを買うつもりだけど、お金が無いんだ」
『俺の所で余ってるシングルベッドやるから、二つ並べたら一足す一で二だ』
「言いたいことはわかるんだけど、なんか違う……」
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
40.「あやかし」
「あれ、ビールが空っぽになってる」
『飲んでから離席したんだろ？』
「絶対飲んでないよ」
『そうか、不思議だな』
「飲んだでしょ？」
『いや、不思議だな』
今日も酒場の夜は静かに明けていく。