51.「気の狂いそうな平凡な日常」
「あのさ」
『何だ?』
「最近、マンネリ化してきてるよね」
『何が?』
「この話のパターン」
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
52.「そのままの君」
「ありのままの自分を見せ合える関係っていいと思わない?」
『そうだな』
「それこそ相手に対する信頼を形にしたものだよね」
『ああ』
「それって素晴らしいことだよね」
『つまみ食いを目撃された言い訳じゃなかったらな』
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
53.「残酷な夢」
「昔、文集で、夢を書きなさいっていうのがあったんだ」
『ほう、将来の夢か。何て書いたんだ?』
「歌手になる夢って書いた」
『歌手になりたかったのか』
「ううん、目が覚めたんだ」
『ああ、自分には無理だって?』
「ううん、布団の中で目が覚めた」
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
54.「ピーターパンシンドローム」
「あー、しんどい働きたくない」
『何、子供みたいなこと言ってんだよ』
「君の方が年下じゃない」
『精神年齢は俺の方が上だ』
「これから運転するのに、アルコール飲んでることばらすよ?」
『今日、おごるつもりだったのにな』
「ごめんなさい」
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
55.「人形」
「おーい」
『……』
「酔って寝ちゃった?」
『……』
「まるで人形みたいな寝顔だねえ」
『……』
「それにしても、君って頭も顔もいいし、スポーツ万能、口は少し悪いけど言うこと無いねえ」
『おい、何調子いいこと言って、つまみ食いしてんだ』
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
56.「ハルシオン」
「最近、眠れないから、ハルシオン服用しようかと思って調べたんだ」
『ほう』
「ハルシオンを飲むときは飲酒を控えてくださいだって」
『お前には無理だな』
「だよね、自分でも分かるよ」
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
57.「裸婦の肖像」
『ほう』
「今、行こうと思った?」
『思ってない』
「嘘つき。裸婦だよ? 裸だよ?」
『いや、俺インターネットあるから』
「ああ、納得」
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
58.「セックスと純潔」
「純潔ってよくセックスしたことのない人に使われるよね」
『ああ、そうだな』
「精神面と肉体面に対しての二つの意味があるらしいよ」
『心にけがれのない清らかな人も純潔に入るらしいな』
「その場合、純粋とほぼ同意義だね」
『どっちにしろ、お前とは程遠い言葉だな』
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
59.「唇から愛」
「君ってさ、愛がないよ」
『お前の口から愛なんて言葉が聞けるなんてな』
「だって愛がないもん」
『まあそれはいいから、金返せ』
今日も酒場の夜は静かに明けていく。
60.「長い夜」
「ここで一番おいしい飲み物って何だと思う?」
『カクテルかな』
「日本酒だよ」
『いや、ワインかな』
「いや、ビールだよ」
『白黒つけるか。今夜は長い夜になりそうだな』
「でももうすぐ閉店だよ」
今日も酒場の夜は静かに明けていく。