小さな冒険の書

 古く、世界には闇があった。

 邪悪をつかねる存在を、怪物たちは神と名づけ、人々は魔王と呼んだ。
 歴史は繰り返す。時代が今日を迎える前に、いったいどれほどの魔が生まれ、そして倒れていっただろう。

 そう――魔王は倒された。天地に君臨せんと牙をむいた彼らの野望が果たされたことなど一度もない。人々の希望の体現者が、ことごとく魔王の前に立ちはだかったのだ。
 不可能と思われた魔王たちの打倒をなしたものは、尊敬と感謝を念とともに勇者の名を授かった。
 勇気ある者。世界を救った大英雄。その冠は輝かしく、武勇は猛々しかった。

 しかし、勇気はどこにでもある。そこにも、向こうにも、そして――ここにも。

 地獄の帝王と妖魔の王子は天空の勇者とその仲間たちによって討伐された。生きる英雄となった彼らは、導かれし者と呼ばれ、やがて伝説となった。
 世界には平和が訪れた。退屈と鬱屈に満ちた、平和が。

 それでも、探検は終わらない。
 人々は求めたのだ。飽くことなく、渇望し続けたのだ。
 冒険を。心躍る、神話の再生を。

 だが、魔王なき世界に邪悪はない。それはそう、安穏の中には決して英雄が生まれぬように。
 だからこれは、他愛のない話。神話にも伝説にもならない、小さな話。
 小さな村の小さな冒険。
 小さな者の小さな記録。

 小さな小さな、勇気の話。

 旅人よ。
 あなたのこれまでの行いを冒険の書に記録しますか?

目次

01.【カイルの憂鬱】
02.【クライスの生意気】
03.【ルーの生活】
04.【カイルと戦士と僧侶と】
05.【アルビノのルー】
06.【クライスは走る】
07.【カイル、将来への不安】
08.【ルーの思うこと】
09.【クライスは剣を持つ】
10.【魔法使いカイル】
11.【ルーの見る夢】
12.【クライスは小石を握って】
13.【カイルの試練】
14.【ルーにとっての無価値な日々】
15.【クライスは響く】
16.【迷子のカイル】
17.【ルーの決意】
18.【焦燥と鼓舞入り交じるクライス】
19.【僧侶ルーの役目】
20.【半人前カイルの武器】
21.【ルーの切り札】
22.【集中するカイル】
23.【傷だらけのルー】
24.【カイルの謝罪】
25.【ルーの追憶】
26.【カイルの灯火】
27.【クライスは気付く】
28.【ルーの恐怖】
29.【カイルと考察】
30.【駆けるクライス】
31.【ルーの答え】
32.【カイルの悟り】
33.【クライスは太陽の路をあるく】
34.【さようならと、ルーは言う】
35.【未熟者カイル】
36.【クライスの解決】
37.【カイルの勇気】
38.【風来のクライス】
39.【カイル、クライス、ルー】(エピローグ)

概要

朱空、Raise、Yoshiのリレー小説です。
それぞれの描く主人公は、朱空がルー、Raiseがクライス、Yoshiがカイルとなっております。
一応の時代設定はドラクエ4以後、ドラクエ5以前としています。
しかしながら、これは小さな冒険を描いたもの。
あまり、そのあたりの設定は関係ありません。

 2006.7   設定立案
 2006.8   執筆開始
 2008.8   19話目で一時活動停止
 2010.1   活動再開(20話目から新規執筆に加え、過去分の改稿)
 2011.2.15 エピローグ投稿、更新終了

およそ、四年半にわたる長きのご愛読、ありがとうござました。

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