01.プロローグ

 いざないの洞窟の前には長蛇の列ができていた。
 多くの勇者達が洞窟の中にあると言われる「天空の鎧」を求めて列をなしていたのだ。
 洞窟の前には王国の正規兵が勇者達に整理券を配っていた。
「一度に入れるのは1チームだけなので、勇者の方々は2列に並んでお待ち願います。通行の邪魔になるので、道路にははみ出さないよう、ご協力よろしくお願いいたします」
 ずっと同じことをアナウンスしているのだろう。枯れたハスキーな声で正規兵は列に向かって話しかけている。

 列に並んでいる勇者達のいでたちは様々であった。
 いかにも肉弾戦が好きそうな体育会系チームや、全員がローブ姿のインドア系、チーム全員が露出度の高いセクシー美女軍団、戦士系と魔術師系の混成チーム、武器を持たずに自らが人間の盾となる反戦運動系、他にも色々なチームが並んでいた。
 その中、前方から30チーム目あたりに、シャルルは並んでいた。
 もう二日も並んでいるが、何ら進展はなく、退屈していたチームのメンバーは代わる代わる馬車に戻り、携帯ゲームをやったり、仮眠をとったりしながら、誰か一人が代表で並ぶことになっていた。
 今はチームリーダーのシャルルの番であった。
 シャルルは貴族の出であるが、現国王勢力(当時は人民解放戦線)と魔王軍による、この国の内戦が始まってから、家が没落し、生活の為、やむなく職業案内所「ルイーダ」で勇者登録をしたのであった。
 高貴な家の出であったため、先祖伝来の漆(うるし)の鎧を着て旅だったので、仲間内からはシャルル・ド・ラクエ(フランス語で「うるしのシャルル」の意)と呼ばれ馬鹿にされていた。
 ……きょうび漆の鎧って。

 話は元に戻るが、24時間体制で列の順番を待たなければいけないので、シャルル達は一人あたま6時間も待たなくてはいけなかった。
 この時代、まだ法整備が整っておらず、勇者のチームは1チーム4名までしか組めない事になっており、違反すると勇者の称号のはく奪、多額の違反金、もしくは5年以下の懲役、並びに向こう10年間、国の仕事に就けない上に、ローンも組めない状態となってしまうため、違反するものはまれであった。
 あまりにも長く待たされた勇者の1チームのメンバーがついにしびれを切らし、入口の兵士に食ってかかった。
「おい! あとどんだけ待たせんだよ!? もう3日も待ってんだぞ!? 次の仕事とか入ってるし、ここで時間食うわけにはいかねーんだよ! お前責任取れんのか?!」
「すみません……、規則なんで、自分にはどうしようもできないんですよ。前は違ったんですけど、斃流是婆武(ベルゼバブ)事件があってから、なかなか司法側も厳しくなってしまって……。多分もうそろそろ、前に入ったチームがお出になる時間だと思いますので、もうしばらくお待ち願います。きっとこれだけ時間がかかるってことは、中の魔物に殺害されてる可能性も高いので、ボディバック(死体袋)(※1)が出てきたら、次のチームをご案内します。今、係の者が洞窟内の確認にいっておりますので、ご迷惑おかけしますが、もうしばらくだけお待ち願います」

 斃流是婆武(ベルゼバブ)事件とは、その昔、「やまびこの剣」があるとされる、「ささやきの洞窟」に勇者達が殺到し、洞窟の入り口で勇者チーム同士による抗争が勃発し、死傷者が多数発生した事件である。
 当時はひとつの洞窟に入れるのは1チームまでという法律や、勇者チーム1チーム4名まで、という法律は存在しなかったため、手柄を焦る勇者達は何チーム、何十人も洞窟に入り込み、血眼になって「やまびこの剣」を探していた。
 洞窟の中は勇者達で溢れかえり、入口あたりまでぎゅうぎゅう詰めだった為、洞窟に入れなかったチームが強引に中に入ろうと、他のチームメンバーの肩に手をかけたのが始まりであった。
 肩に手をかけられたチームは、大都市ニューアフレガルドの中でもかなり規模の大きい武闘派チーム「斃流是婆武(ベルゼバブ)」のメンバーであった為、手をかけた方はその場でリンチに遭い、反撃に出た仲間も軒並み、「斃流是婆武(ベルゼバブ)」のメンバーに袋だたきにされたのであった。そして暴行を止めようと他のチームも乱戦に加わり、死者124名、重傷者504名、その他軽傷者多数の前代未聞の大惨事となったのである。

 その後、ニューアフレガルド内の小さなチームからの斃流是婆武(ベルゼバブ)メンバーに対する報復が相次ぎ、やがて小さなチーム同士が結託し、「ニューアフレガルド連合」を組織し、斃流是婆武(ベルゼバブ)との血で血を洗う全面抗争に発展したため、被害は一般人にまで及んだ。
 大多数の勇者は国からの正式な依頼である職業案内所兼民間軍事会社「ルイーダ」に籍を置いていたので、国と「ルイーダ」は世論の攻撃の的とされ、窮地に落とされることとなったのだ。

 その事件があって以来、国と勇者のあり方は大きく変わったのであった。
 斃流是婆武(ベルゼバブ)やその他の勇者達のチームは解体され、資金調達に関与した会社なども公安に摘発され、それまであった勇者達のチームは消滅した。
 そして新たな法律を設定し、国とルイーダは勇者達を厳しく監視することとなったのだ。
 しかし、小規模な構成となったとはいえ、現在の勇者達の中には元ベルゼバブのメンバーも多数在籍しており、元ベルゼバブメンバー同士による裏でのチーム同士の結託があり、完全にクリーンな状態とはいえない。

 しかし、国は魔王軍との戦闘による正規兵の被害(※2)を極力抑え、世論を味方につけ、軍事費の削減を阻止する事に必死だったので、勇者達の黒いうわさは容認している部分もあった。

(※1)「ボディバック」
 この時代の勇者達は、KIA(戦闘行動中死亡、戦死)となった仲間を主にボディバックで搬送していた。
 以前は棺桶に入れて搬送したが、平時は空っぽの棺桶が狭い馬車の中のかなりのスペースをとったり、値段が高い割に、取り回しが悪く、勇者一行の旅の妨げとなった。さらに、何度も遺体を入れたり、何日も遺体を入れた状態で旅を続けると、遺体から出る腐敗した体液により、棺桶の木が腐り、数回でだめになることもあった。
 衛生的に良くなく、遺体から感染して全滅した勇者チームが多数出たり、棺桶ごと戦死した仲間を放棄していくチームも出始めたので、国と「ルイーダ」は、簡易的で衛生的なポリエチレン製の遺体袋を配布し、米軍方式をとることにした。

(※2)「戦闘による正規兵の被害」
 正規兵が戦死した場合、確認死亡被害としてカウントされるが、ルイーダに所属する勇者の場合は戦死しても、被害数にはカウントされない。
 勇者制度を実用化してからは、魔王軍との戦闘における表向きの戦死者数は大きく下がり、軍事費も前年度と比較し、多く割り当てられるようになった。

<1. by NIGHTRAIN>


 シャルルは、勇者登録した時の事を思い出していた。
 長く続く内戦で国中に難民や失業者が溢れ、手に職のないシャルルのような若者がまともな職に就くのは難しかったとはいえ、こんなに地味で辛く、実入りの少ない仕事なら、勇者なんて選ぶんじゃなかった。
 せめて宿屋あたりでバイトしていれば、こんなに何日も外で並ばされたり、へんな指輪とかアイテム探し求めてあちこちに命がけの辛い出張にいかされないで済んでいたのに。
 広告や、説明会で聞いた華やかなイメージとはかけ離れた、社会構造のエアポケットにでもはまったような、酷くみじめな実態がそこにはあった。国公認のブラック企業である所がタチの悪い所だ。

 ルイーダの求人案内には夢と希望に溢れた事がつらつらと書かれている。
「公共事業だから安心!」
「能力次第では就業直後から月収1000ゴールド(※1)も可能!」
「国中のあらゆる所への出張があり、たくさんの仲間たちと出会えます!」
「冒険で見つけたアイテムはそのままお渡しします!」
「資格、経験、性別、年齢一切問いません!明日からあなたも勇者の仲間入り!」
「各種福利厚生あり。一例:戦闘中死亡した場合は教会にて再生サービスあり。再生費用は給与から天引きなので面倒な手続きは要りません。」
「簡単な国王との面接後、すぐに就業可」
「希望にあふれた仲間達と楽しく冒険しませんか?」

 そもそも、シャルルは幼少期はとても裕福な家で過ごし、何不自由ない生活を送り、死ぬまで領民から搾取して生きていけるはずだったのだ。
 ところが、その当時貴族を優遇していた魔王勢力に反旗を翻した人民解放戦線(現国王勢力)が国中の各地に戦乱の火を広げた。さらに人道支援の旗の元、諸外国が内戦に乗じて国中に傭兵や軍隊を派遣し、余計に事態を悪化させた。
 人民解放戦線は、奴隷解放を宣言しつつ勢力を拡大し始めたため、シャルルの家も没落の憂き目を見た。人民解放戦線の重要戦略拠点として家と敷地、財産を全て接収されたのだ。
 方面軍の担当官に直訴しに行った両親は逮捕され、簡易裁判により2週間後には死刑となった。残されたシャルルは、幼い妹のマリアンナを連れて親族として逮捕されないよう、別の地区に逃亡し、難民生活を送ることとなった。

 そして優勢になるにつれて、様々な制度を新設し、領民を苦しめるようになった国王軍は、表向きは人民による人民解放のシンボルとして勇者制度を作り上げた。これは、こう着状態に陥り、泥沼化する内戦で、多くの正規兵を失った国王軍の苦肉の策であったが、信じられないほど民衆の支持を集め、ミラクルヒットとなった。
 シャルルもその熱いブームにほだされ、妹を食わせていくため、やむなく勇者登録することになったのだ。
 最初に国公認の職業案内所、ルイーダを訪れ、勇者登録をした。
 さいわいにも、ルイーダで登録する名前は、名字でも名前でも、ひらがな4文字以内なら、どちらでも良かったので、両親が元貴族で、逮捕された事実は隠ぺいすることができた。

 勇者の仮登録後、説明会に行くと、国王による簡単な面接、業務内容説明とルイーダの事務員らの制度や規則、法律の説明後、勇者専用の電子マネーのスマートフォン(※2)が支給され、今活躍している勇者らによる体験談などを聞き、すっかりその気になった所で、酒やオードブルが振る舞われ、ハープの生演奏付きの立食パーティが始まった。
 ここで勇者達は、同じ旅をする仲間を探し、4人集まったところで本登録することになるのだ。
 シャルルは高貴な血をひいていて、幼いころから貴族としての英才教育を受けていたため、身のこなし、歳の割に落ち着いた雰囲気、話し方などは実に清廉な印象を与え、パーティでは主に若い女性の勇者達が一緒に旅をしようと話しかけてきた。
 すっかり気を良くしたシャルルは、よく考えもせずに、そこで2人の女を仲間に入れ、もう一人は旅や戦闘の助言役として、戦闘経験豊富そうな50代の僧侶の男性を仲間に入れ、本登録を済ませた。
 そして説明会で配られた資料と地図を元に、各地を巡る旅に出る事となったのだ。

 しかし、行く先々で、多くの戦闘に巻き込まれる上、立ち寄る町の多くでは、シャルル達は歓迎されることはなかった。
 シャルル達の前に町を訪れる勇者達による略奪や住居不法侵入、友軍誤射、勇者を狙ったテロによる住民の被害、戦闘時のストレスでノイローゼとなった勇者達による町の住民への暴行、レイプが横行し、勇者という職業の印象は決して良いものではなかった。
 後で職業(勇者とは別に、従来ついている職業がある)が判明したのだが、2人の「遊び人」の女性は、全くと言って戦闘にもアイテム探しにも加わらず、シャルルが戦闘で稼いだお金は彼女たちのエステ代やアクセサリー、服を購入する費用となって消えた。
 50代の僧侶も口先ばかりで行動しようとせず、やたら神や仏の道を説き、シャルルの殺生をとがめるので、結果全員クビとした。
 再度ルイーダに足を運んだシャルルは、今度は戦闘や旅で役立ちそうな、荒々しい猛者達を仲間に入れたが、今度はその猛者たちにアゴでコキ使われ、買い出しや戦闘、おまけに荷物番まで全てシャルル一人に押し付けられることとなった。
 チームリーダーとしての立場はまるでなく、戦闘で稼いだお金は全て猛者たちの飲み代に消える日々となったので、ある晩シャルルはチームを脱走した。
 そして三度ルイーダを訪れたシャルルは、今度はやっかいな事にならないよう、可もなく不可もなさそうな、毒にも薬にもならずに、自分の意見を持たず、ただなんとなくノリで勇者として働いていそうな輩3人を見定め、チームを作り今に至る。
 しかし、これといって長所が無く、とりたてて誇れるもののないシャルルのチームは、やはり行く先々で他のチームに先を越され、ロクなアイテムや、まとまったお金もなかなか手に入らず、うだつのあがらない毎日を過ごしていた。
 また、仲間も一応働いてはくれているが、シャルルほど生活に困ってもいないようで、近々辞めたいと言い始めていた。
 シャルルは何度も仲間を探しにルイーダに行くのもうんざりしていたので、オールドスタイルの一人勇者として登録してもいいかなと考えていたが、一人で旅をするからには、生存能力を上げる為に、まずは漆の鎧からもう少しマシな鎧に変えようと、いざないの洞窟を訪れたのであった。

(※1)「月収1000ゴールド」
 当時のレート:1G=500JPY
 ちょうどワンコイン500円だったので、日本円に換算すると月収50万円という破格の待遇である。

(※2)「電子マネーのスマートフォン」
 勇者専用に配給されるスマートフォン。
 魔王軍との戦闘に勝利した時や、王国内の様々なお店で物を売買する際、自動で入金、出金される便利な道具であり、勇者としてルイーダに登録した者にとっては命よりも大切なもの。
 携帯端末と電子マネーを実用化した初の試みであり、このスマートフォン以外は携帯端末はなく(この時代はまだ一般化されていなかった)電子マネーは扱えない。王国の民には、例え王族であっても勇者以外には支給されず、これこそが勇者たる特権であり、職にありつき、これを手に入れる為に命の危険を冒し勇者になるものが後を絶たなかった。
 様々なコンテンツをダウンロードすることもでき、旅のお供としても重宝された。当然スマートフォンを狙った盗賊の類による勇者狩りが横行したが、勇者達は命がけで闘い、スマートフォンを守ることによりさらなる経験値を積み、戦闘のプロフェッショナル集団となっていった。
 あえなく盗賊の前に敗れ去った勇者達のスマートフォンは、闇市で高額で取引された。国王勢は、勇者制度と、この電子マネーにより、内戦で疲弊しきっていた経済の活性化に成功し、魔王軍に対して優勢に立つきっかけとなった。
 ちなみに第1話・項番1でシャルルの仲間たちがヒマつぶしに馬車の中でやっていた携帯ゲームは、このスマートフォンの人気ダウンロードコンテンツ「怪物狩人」(略して「かいがり」と呼ばれて若い勇者達に親しまれた。)である。
 なお、このスマートフォンには、写真、動画撮影機能もついている。一般家庭や、このスマートフォンからもアクセスできる人気動画投稿サイト「あなたの筒」には、さまざまな勇者達の動画が投稿されており、まれに悪ノリした勇者チームが殺害した魔物に放尿する動画や写真がアップされ、問題となることもある。

<2. by NIGHTRAIN>


 ふと気付くと、シャルル達が並んでいる上空を旋回するものがあった。
 よく目を凝らすと、それは最近国王軍が導入した、「メカキメラ」であった。

 メカキメラとは、その名の通り、機械のキメラである。
 魔王軍がハゲタカとトカゲ、蛇などの遺伝子操作により生み出し、戦線に大量に投入されている生物兵器「キメラ」になぞらえたもので、直接キメラを改造したものではない。
 近年、国王軍に徐々に勢力範囲を奪われ、戦局が不利になった魔王軍は、主戦力が勇者達となった国王軍に打撃を与える為、道路や橋の路肩に爆弾岩を埋め込み、そこを通りかかる勇者の馬車を狙って起爆する作戦を編み出した。
 勇者達は一部を除き、大半は馬車により移動するので、路肩爆弾岩は効果的であった。
 正面から勇者達に挑むと勝てない魔物でも、物陰に隠れ、馬車が通りかかった時に、爆弾岩を起爆させるだけで大損害を与える事ができるのだ。魔王軍が展開する自爆テロなどのゲリラ戦法との相性はバッチリだった。直接的な損害だけではなく、どこに敵が潜んでいるかわからない恐怖感を勇者達に与える事により、PTSDなどの副次的な被害も与える事ができたのだ。

 この戦法に頭を悩ませた国王軍は、上空から偵察できる無人機を開発し、その赤外線画像を勇者達の携帯端末に送ることで、ゆく先々に仕掛けられた爆弾岩などのトラップを発見・回避する戦法を編み出した。
 さらには携帯端末から無人機をコントロールできるように改良し、上空から魔物が潜伏している場所を索敵し、魔王軍から鹵獲(ろかく)した爆弾岩で爆撃することにより、魔物を安全な場所から暗殺することができるようになった。
 その無人機に名付けられたのが、敵の生物兵器「キメラ」の名を取った、「メカキメラ」である。
 しかし、数多くの勇者達の端末から信号がやりとりされるので誤動作も多く、さらには不時着したメカキメラを回収した魔王軍が、改造を施し、国王軍への爆撃に利用されるなど、不備も多かった上、小さな携帯端末の画面では、爆撃対象を誤ることも多く、一般人の民家なども誤爆の被害を受けた。
 無人機による被害は上昇しており、民衆からの評判は良くはなかったのだが、国王軍の正規兵と勇者達からは絶大な評価を得ていた。

 シャルルは上空を見上げながら、メカキメラの動向を見守った。
 友軍に誤爆することも多い、この無人機をシャルルは好きではなかった。無人機を見上げながらシャルルは不安になった。
 シャルルのチームメンバーは、皆もうすぐチームを抜けたいと言っており、戦士ジャン(23)♂の理由が「今回の任務が終わったら、故郷のいいなづけと結婚するんだよ……」だったのだが、その話を聞いた時は、死亡フラグが立っている事に気付きながらも、本人を思いやり、そっとしておいた。
 しかし、両親が殺されてからというもの、不幸続きなシャルルは、ややマイナス思考の思い込みが激しい性格であり、チームで行動している時、何か悪い事があったりすると、そういう死亡フラグが立っているメンバーがいることのせいにし、ジャンの事が気に食わなかった。
 そして、もうひとつ、最大の不安要素があった。
 シャルルのチームに所属している残りの二人、武道家ベッソン(28)♂と魔法使いアンヌ(25)♀がデキていることだ。
 普通の恋人同士ならまあそっとしておくのだが、最近付き合いだしたばかりなので、嬉しくて楽しくて仕方がない二人は、常に度が過ぎるほどイチャつく、バカップルと化していた。魔物の巣窟の中、旅をするチームにとってはあまり好ましくない状況である。
 少し前、国王軍より依頼され、「まほうのつえ」を探しに行った呪われた湖畔で、夜キャンプしていた時など、馬車の中に二人だけで戻り、エロい事をたくさんして、はしゃいで楽しんでいたりしたので、やはり死亡フラグ急上昇であり、シャルルは気に入らなかった。
 今回の旅は、恋人探しの旅行気分でついてきただけなので、目的を達成した今となっては旅を続ける理由もなく、今回の旅が終わったら、2人でチームを抜けたいのだと言う。
 そんなことを思い出し、うっすらと不安な気持ちになっていたシャルルの眼前で、無人機が高度を落とし始めた。

<3. by NIGHTRAIN>


「おい、なんかあのメカキメラ、様子がおかしくないか?」
 列に並んでいた勇者の一人がいぶかしげにそう言った次の瞬間、誰かが叫んだ。
「まずい! 伏せろ! 爆弾岩を発射し――……」
 言い終わらないうちに、すさまじい爆風と衝撃、粉塵があたりを包んだ。
 シャルルは衝撃でその場から吹き飛ばされた。幸いにも丈の長い草むらがシャルルの身をクッション代わりに包み、ダメージを軽減したが、それでもシャルルは全身がバラバラになりそうな衝撃の為、意識を失った。

 シャルルが次に気がついたとき、眼前には阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。
 数10チームの勇者達が並んでいた場所には大きなクレーターができており、数百、数千に分断され、元が誰であったのか分からないほど焼けただれバラバラに損壊した遺体と血と煙があたりを埋め尽くしていた。
 これではさすがに教会の復活サービスも無理だろう。ジ・エンドである。
 すさまじい爆発音の為、鼓膜がやられて、「キーン」と続く耳鳴りの中、シャルルの頭の中に、何故か呪わしい「デレデレデレデレデレデレデレデレ、デッデデン♪」という音楽(ttp://www.youtube.com/watch?v=QPsXm5RWbkU)と共に、「ぼうけんのしょがきえてしまいました」という声が聞こえたような気がした。
 あまりにも爆発の衝撃が激しすぎたため、一時的におかしくなってしまったのだろうと、無理矢理自分を納得させた。
 そんな音楽と、言葉なんて聞こえるはずがないのだから。

 動ける者は数名しかいないようで、何が起こったのか分からないといった具合に、全身血だらけの生存者たちはその場に立ち尽くすか、へたり込み、あるいはフラフラと夢遊病者のごとくあたりを彷徨っていた。
 ある者は自分の腕を探し、拾った腕を肩に合わせては、違う人間の腕と分かると、また捨てて新たな腕を探して彷徨った。また、ある者は、上半身だけとなった自分のチームメンバーの体を抱き、嗚咽しながら声にならない声で半狂乱となり叫んでいた。
 シャルルは自分の仲間が待機していた馬車があった辺りを見たが、馬車は他のチームのものも合わせ、跡かたもなく消えていた。
 辺りに散らばった残骸や人獣木端入り乱れた肉片、血だまりが事の壮絶さを物語っていた。
 シャルルの不安は的中したのである。
 さらに悪いことに、いざないの洞窟の入り口も大量の土砂や岩石に埋もれていた。これでは天空の鎧を手に入れるのも絶望的である。
 あんな連中と旅を続けていたからだ。そうシャルルは思い返した後、バラバラになった数百の遺体の中に、キラキラと光るものを発見した。激しい打撲、捻挫、火傷の為歩くのもやっとのシャルルであったが、なんとか体を引きずりながら、まるで引き寄せられるかのように、光る物体へと近づいていった。
 光る物体は、手のひらほどの大きさの何かのかけらのようで、勇者達の血と臓物にまみれていたが、シャルルにはそれが何かはっきりとわかった。
 その光る物体をとると、裏側に「天空の」と書いてあったのだ。これは恐らく、天空の鎧の破片に違いない。誰かがやっと洞窟の中から持ち帰ったところで、あの爆撃でバラバラになってしまったのだ。
 そう思い、その欠片を悔しさのあまり、握りしめたところで、シャルルは全身のダメージの為、気を失った。遠くなる意識の中で、わずかな生存者たちの絶望の嘆きがむなしく聞こえていた。

<4. by NIGHTRAIN>


 次にシャルルが目を覚ましたのは、国王軍の野戦病院のベッドの上だった。
 ベッドはもう何か月もシーツを取り替えていないのか、臭いや汚れがひどく、吐き気がした。
「う……あ、……」
 シャルルが声にならない声を出すと、近くにいた、恰幅の良い黒人の看護婦が気づいた。
「あら、お目覚めのようね、勇者さん。あなた一週間も眠っていたから、もう駄目かと思ったわ」
 看護婦は言い終わると、まるで壊れた物でも見るような、何の感情もない冷たい目でシャルルを一瞥した後、シャルルの隣のベッドの下の水たまりをモップで拭き、一杯になったバケツを持ってどこかへ行ってしまった。シャルルの意識がはっきりしてくると、その水たまりは血であったことがわかった。
 シャルルは信じられない思いであった。一週間前までは、うだつがあがらないとはいえ、なんとかマトモな生活をして、普通に仲間と暮らせていたのだ。
 両親が死刑となった時のことを思い出した。
 その時も、一瞬にして地獄に叩き落とされたような感覚に陥り、意識が遠のき、途方に暮れたが、今も同じ気持ちであった。
 全身を包帯やギブスで固定されていたので、首を回すのも大変であったが、辺りを見回すと、シャルルのいる場所は負傷した勇者や兵士で埋め尽くされていた。
 中には手足を欠損し、包帯も血まみれのまま放置されている者もいる。ほとんどが重傷者ばかりで、医者や看護婦の手が足りず、医療品も不足しているのか、応急処置を済ませた後は、ベッドに寝かせ放置されているだけであるらしかった。

「おい! となりの奴死んでるぞ! 早く死体をどけてくれ! 臭くてこっちが死んじまいそうだ!」
「魔法使いとか僧侶はいないのか!? 回復の呪文をかけてくれよ!」
「おい! 俺の体が糞だらけだぞ! 俺のケツの下の汚物を早く取り除いてくれ! これは命令だ! 俺は勇者だぞ! お願いします……体が動かないんだ! 頼むから……!」
 負傷者たちは口々に悪態交じりに、もしくは泣きすがるような声で叫んでいたが、数名の看護婦や医者は無視しながら作業を続けていた。戦時下で極端に物資や人員が少なくなっているのが野戦病院の現状だった。
 教会の神父が、ベッドを回り、もう助かりそうもない兵士や勇者らに、最期の祈りを与えていた。
「……神父さん……、俺……、勇者なんだけど……、復活サービスで……生き返るんだよな……?」
 ある勇者は神父にそう尋ねていたが、神父が答えるには、最近あまりにも戦死する勇者が多く、各地の教会の復活サービスはパンク状態のようであった。 順番待ちで早くても半年は待たねば復活できないので、その間に遺体は腐敗し、復活しても脳まで腐っている為、正常な判断力を失っており、半年の間放置された分、異常な食欲に支配され、動くものは全て襲いかかる危険な存在となってしまうらしかった。
 それでも遺族の切な願いで復活を遂げる者は多く、大概は復活直後に、喜ぶ遺族に襲いかかり、愛する者の人肉で底なしの食欲を満たした後、勇者や国王軍の兵士に殺されることとなった。

 死ななくて良かった。もう勇者なんて辞めよう。そうシャルルが思い、まだなんとか五体満足な自分の運に感謝していると、一人の男が近づいてきた。
「おお、目が覚めたようだね。良かったよ。君は特別な勇者様だからね」
 40後半くらいに見えるその男が言うには、男は内務省の特別公安機関の人間であるらしかった。
 国王直下の、特別な機関であるとのことで、証拠に勇者でもないのに携帯端末を持っていた。
「君が発見した“あれ”は、我々にとって非常に重要なものでね」
 男は自己紹介も言い終わるか終らないかのうちに続けた。
「あれは、単なる伝説の武具の破片ではなく、この国の運命を左右する大変危険なものなんだよ。そして君自身の存在もね」
 シャルルは一週間ぶりに目を覚まし、全身の痛みと、朦朧とする意識の中、急な来訪者の言葉の意味がほとんど分からなかったが、とてもマズイ事になっているという実感はうっすら感じ取っていた。

<5. by NIGHTRAIN>


「一週間ぶりに目を覚ましたんだ。水でも飲むか? 今は衰弱しきっているようだから、満足に話をすることもできないだろう。ここは酷い場所だしな……」
 男は水差しを使い、シャルルの口に水滴を垂らした。
 口の中や唇の周りの乾いた粘膜や血の塊が水で溶かされ、ぬるぬるとした不快感を感じたが、さらに水滴が追加されると粘膜や血は喉の奥に洗い流された。
「さて……、君が探しに行っていた天空の鎧は、我が国の全土に散らばる”天空シリーズ”のひとつであることは君も知っているね?」
 ルイーダで勇者登録をした時に説明会で聞いた内容であった。
 通常の武器では斬れないようなものでも斬る事ができたり、即死してしまうような攻撃に耐えられる、奇跡のような伝説の武具である。古代文明によって作られたと言われるそれらオーバーテクノロジーの武具の数々は、Oパーツ(オーパーツ)と呼ばれ、魔王軍に対抗する勇者たちには率先して探索するよう指令が下っていた。
 見つけたOパーツは、国王軍に持ち帰っても、そのままその武具を利用して魔王軍との戦闘に活用しても良く、判断は第一発見者に委ねられた。
 いくつかの伝説の武具が紹介されたが、天空シリーズはその中でもSランクに該当する希少価値の高いものであった。当然、ひとつ発見するだけで、一生遊んで暮らせるだけの額で国が買い取ってくれるという話であった。
 勇者以外でも、一般市民による発掘隊が組織され、各地の洞窟や祠にOパーツの探索に向かったが、大概の洞窟や祠は魔物の巣窟となっている上、前線の奥深く、国王軍が管理しきれていない洞窟などは、運よく発掘隊がOパーツを発見しても、後から入ってきた勇者チームに強奪される等、生きて帰ってくるものはほとんどいなかった。
 ニューアリアハンの民間発掘団体「あるある探検隊」の面々が、元ベルゼバブの構成員からなる愚連隊勇者チームに惨殺された事件などは記憶に新しい。

 それほどまでにOパーツは人々を熱狂させた。
 中でもSランクの天空シリーズは国王軍、魔王軍、民間人、全ての人々が追い求めた。天空シリーズは、今回シャルルが発見した天空の鎧(破壊されてしまったが)の他に2つが発掘されていた。
 「天空のこて」と「天空の兜」である。
 「天空のこて」は、前線の魔王軍と国王軍の境界線にあった「せせらぎのほこら」で、魔族、勇者入り乱れた激しい戦闘の末、勇者達によって国王軍のもとに持ち帰られ、厳重に管理・保管されていた。
 「天空の兜」は多くの勇者達の中でも、その武勇で世に広く知られる、ラヴァル侯爵の元にあった。
 当時いち勇者にすぎなかったラヴァル侯爵は、単独で魔王領の奥深くの天空シリーズのアイテムが眠ると言われていた「やすらぎの泉」まで辿りつき、見事に「天空の兜」を持ち帰ったのであった。
 その後は多くの戦闘で財をなし、勇者を引退し、自らがコーディネイトした独自の戦術理論をもとに、ルイーダのフランチャイズとして民間軍事会社を立ち上げ、自らの戦術を叩きこんだ優秀な勇者を多く輩出し、その功績を国王に認められ、侯爵の爵位を手に入れたのであった。

「今回君が発見した天空の鎧の破片だが、実は”破片”であったことにとても重要な意味があってね。君が発見したものは、天空の鎧のただの破片ではなく、コアパーツと呼ばれる部分だったわけなんだ。単純に説明すると、天空シリーズの優れた性能の元となるのがコアパーツで、鎧が破壊されることによって露出した状態となっていたのだよ。君はコアパーツを発見した時、光を見なかったか?」

 シャルルは天空の鎧の破片を見つけた時のことを思い出した。
 確かに、小さな光であったが、魂でさえも吸い寄せられるような強烈な感覚に幻惑され、ふらふらと歩きだしていた。

「ああ、まだ話すのはつらそうだな。そのままにしてくれてかまわんよ。まあ君は必ず光を見てるはずなんだ。あの光は特別でね。人でも物体でも、ありとあらゆるものに反応し、呼び寄せると言われている。現に、君の手のひらには、それを握った証拠が残されていた。ああ、今は包帯でぐるぐる巻きでわからないだろうがね」

 シャルルは破片を握りしめた右手を見たが、包帯が巻かれていたので確認することはできなかった。

「君がそれを握ったあとは、光は失われて、我々が君たちを発見した時は、本当にただの鎧の破片として、君のそばに転がっていた。そうなると、破片には何の価値もなくなる。せいぜい博物館に展示される程度の代物でしかないが、我々はしかたなく回収したよ。さて、ここからが本題だ。まあ、もう少し水でも飲めよ」

 そう言うと、男はシャルルの唇にまた水滴を垂らした。
 しぐさはとてもやわらかく、観葉植物に話しかけ、水差しで水を与えるようであったが、男の目の奥には、いいようのない獰猛な光が宿っているように見えた。

<6. by NIGHTRAIN>


「さて、君がコアパーツを握ったことによって、天空の鎧の力の源であったものは“キー”の役割を発動させてね」
 男が続けたが、シャルルには何のことを言っているのか、さっぱり分からなかった。

「ひとつの天空シリーズのOパーツのコアがキーとなることによって、その他のOパーツのコアも共振し、そのコアを露出させることができるようになるんだよ。キーは物でも人でもいい。そのキーとなった存在が、別のOパーツに触れさえすれば、コアパーツを露出させ、安定した形で取り出すことができる。現在ある”天空シリーズ”の他のOパーツ、例えば”炎の鎧”や”炎の剣”といった”炎シリーズ”と呼ばれるものでも似たような特徴があるが、どの種類のOパーツでも、ひとつのキーでは同じシリーズのものしか取りだすことができないらしい。そして、一つのキーによって取り出された他のコアパーツは、球形に組み合わせる事ができるようになる。組み合わせたコアパーツは、とてつもない力の源となるそうだ。我々の研究では、まだどのOパーツのコアも組み合わせたことがなく、それがどういう意味なのかはわからないがね。とにかく危険なものであることは間違いないことは分かっている。国家の命運を左右するほどの規模だよ」

 長々と説明されたが、シャルルには話の1パーセントも理解できなかった。
 突然爆撃され、意識不明の重体からなんとか奇跡の生還を果たした直後、突然難しい話をされても理解できるわけもない。しかし、男のほうはシャルルのそんな事情などおかまいなしであった。

「我々がこの秘密を突き止める為にどれだけの時間とカネと犠牲を払ったことか……。君はのうのうと、その成果を踏みにじるような事をしてくれたがね。君が触れてはいけなかったんだよ、あの“キー”は。大人しく、我々が回収する傍で死んでいてくれれば、私もこんな糞地獄に足を運ぶ必要もなかった。例えば偶然やってしまったにしたって、殺人は許されないだろう? 目の前の人を殺してしまいました。まさか死ぬとは思っていませんでした、なんて世の中では通じないよな? それと同じことを君はやってくれたのもあって、今回我々は君にある依頼をしにきたわけだ」

「ちょっと、待ってくれ。アンタが誰で何をしようが勝手だが、僕には何を言っているのかホントにわからないんだ。もう一度説明してくれないか? 今の話は全く理解できなかった。それに僕は重病人だぞ? こんな酷い場所で、死にかけの状態からなんとか這い上がろうか、ってとこなのに、急にわけのわからない事を言わないでくれ。こんなことをする許可は取ってあるのか?」

 かすれて喉の奥に異物でも詰まったかのような声でシャルルはやっとのことで男に話しかけた。

「わかった。単刀直入に言おう。今から君は我々の要請で、他の天空シリーズを全て見つけてきてもらう。もちろん、その後は一生遊んで暮らせるだけの報酬を出そう。断ることはできない。これで分かったかな? 勇者殿」

 男の理不尽な言いように、シャルルは全身の痛みも忘れるくらい怒りを覚えた。

「できないね! 突然押し掛けてきて、ましてや政府の人間かどうかもわからないアンタに何故そこまで言われなくちゃいけない? 何だ? 何が望みだ? おーい!! 誰か来てくれ! 変な奴が病室に紛れ込んでいるぞ!? すぐに警備兵を呼んできてくれ!!」

 男は叫ぶシャルルを憐れんだような目で見据えた。その目の奥には、あの獰猛な猛禽類のような光が宿っていた。
 そしてどこか演技がかった抑揚のない声でシャルルが叫んでいるのも構わず、強引に話し始めた。

「誰も来ないさ。私は政府の高等な役人だからね。しっかり許可も取ってある。許可証もあるが見せようか? もっとも、その許可証の真贋なんて、君には到底判別できるわけがないがね。悪いが、君がスヤスヤと一週間寝てる間、君の事は調べさせてもらったよ。シャルル・アレマン君。君の憐れなご両親の事も、君の可愛い妹さんのこともね」

 シャルルは叫ぶのを止め、今度は男を睨みつけた。
 全ての合点がいった気がした。この男は公安の人間(恐らく秘密警察)で、国内の人間の中で、現政府に反乱する恐れのある者達を刈り取るように逮捕しているのだ。
 シャルルはそんな噂をどこかで聞いた事があった。

 しかし、シャルルが勇者登録をしたニューアフレガルドでは、シャルル達は難民として流れてきた為、みすぼらしい恰好をしたシャルルと妹のマリアンナが疑われることは無いとタカをくくっており、油断していた。
 しばらくは町の清掃や城壁の補修等のバイトをしながら、町の外に設けられた難民キャンプで妹と二人で生活し、勇者として旅立つ時は、妹は町はずれの小さな教会にあずけ、他の身よりのない子供達と一緒に暮らしているはずだから、素性なんて国王軍に知られるわけがないと安心していたのだ。

「……僕をどうするつもりだ?」
 シャルルは重々しく口を開いた。
「まあ、人の話は最後まで聞けよ。悪い話じゃないし、これは君にとっては最初で最後のビックビジネスのチャンスなんだからな」
 男は居丈高に言い放った。

<7. by NIGHTRAIN>

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