11.導かれし者たち

 導かれし者たち。数えて、八つ――。

 一人は、屈強な肉体を持つ王宮の戦士ライアン。世界を守るため、闘いの最中その身を散らした。彼の没した地には教会が立てられることとなる。バトランド改めグランバニアとなった新国家から北へしばし、今なお「北の教会」としてグランバニアの兵士たちの巡礼の地として親しまれている。
 一人は、絶世の踊り子マーニャ。ライアンと契りを結び、その最期の旅立ちすら気丈に見送った。彼女とライアンの間に生まれた息子の名はポポスは、新国家グランバニアの初代国王となった。
 余談であるが、ポポス以後のグランバニアにおいては、ピピル、ペペルなど、半濁音の名前が好まれてつけられるようになった。ポポス以後の歴代国王にはどういうわけか、似た顔つきをした金髪太っちょの召し使いが仕えていると言う。

 一人は、サントハイムのおてんば姫アリーナ。病を患い、その短い生涯の幕を閉じた。彼女の勇猛な伝説は今なお諸国の武道家の間に語り継がれている。彼女が死の間際に予見した通り、世界は一度その形を失い、新たなる世界へとなった。
 一人は、サントハイムの若き神官クリフト。アリーナと婚姻し、その間に一児をもうける。地形を変え続ける世界においてサントハイムが消滅した後、自らのトレードマークであるラインの刺繍されたハットにあやかり、新国家ラインハットを興す。ラインハットには勇者より引き継いだ「天空の鎧」が長いこと伝わっている。

 一人は、偉大なる魔法使いブライ。天寿を全うしての大往生であった。彼はその最期の弟子ベネットに持てる全ての呪文を教え込んだと言う。子孫こそいなかったブライであるが、ベネットはその遺志を継ぎ、代々その子供にこの偉大なるブライの呪文を伝えていった。大災害の最中、失われた古代呪文もいつかは復活させるべく、彼の一族はひたすらに研究を続けている。

 一人は、世界一の武器商人トルネコ。彼もまた、ライアンとの旅の道中、志半ばに倒れたがその意思を最愛の息子に託す。彼の遺志を継いだ息子は商売において大成功し、サラボナという街を興す。偉大なる武器商人の志を継いだ彼の名は、ポポロ・ルドルフ・タルーンと言う。そして子々孫々、天空の盾と共に、ブオーンの封印された壺を守り続ける使命を負った。

 一人は、神秘なる占い師ミネア。彼女は天空の兜と共に、キングレオやモンバーバラの住人を守り抜いた。全ての国家無き後、人々を導くべく「テルパドール」という国を興す。そして、彼女は予知する。いつの日かまた、この世界を暗雲が襲うと。そのときに現れる天空の勇者のために、彼女の一族は天空の兜を代々伝えていくことになる。

 そして、天空の勇者ユーリル。彼は歴史の表舞台から完全に消し、人知れずどこか小さな村で平穏な生涯を送ったと言う。おそらく、戦いとは決して無縁とは言えなかったのではないだろうか。目に見える人々を守りきるという使命を自身に課し、天空の剣を持って戦い続けていたに違いない。


 最後に、もう一人。導かれし者たちと共に旅をした、伝説に名を残さなかった人物。
 ユーリルとは光と影の対極に位置していた、妖魔の王子にして魔界の勇者ピサロ。彼は最愛のロザリーと共に、閉ざされた地にひっそりとエルフたちの隠れ里を作った。このエルヘブンは、山々に囲まれていたため、長らく知る者もいなかったと言う。


 ――そして、時代は流れる。
 ――人々の記憶も、時代と共に薄れていく。
 ――天空の勇者も、地獄の帝王も、すべて歴史の中に埋もれて行った。

中書き

 要するに、ポポロのお陰でブオーンは封印されたというわけですが、この作品。あと二話だけ続きます。
 最後までお付き合いいただければ幸いです。



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