【二作品目】

 映画のコマーシャルは一瞬だったが、男の想像は無限にも感じられた。
 コマーシャルが終わると同時に、男は現実へと引き戻される。無常にも次にディスプレイに映ったのは、ファンタジーの欠片もない、ただのクイズだった。男はすぐに興味を無くし、窓の外を眺め始める。ちょうど、きりの良いところだったのが幸いだ。続きはどうしようか。男は青々と広がる空の向こうに、想像の世界を探した。

 車内。満員電車という牢獄の中に閉じ込められた人々。その中でも幸運にも勝利をもぎ取った人々が、座席にかけていた。
 スーツを着た男がぼうっと座っている。あるいは思考しているのかもしれない。ラッシュに揺られる、サラリーマンだった。彼の気が狂いそうな日常が、ここにはあった。


 next story is... 『電車。』

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