『カwオwスwリwレwーw』


 休み時間の教室は、とても殺伐としていた。
 普段からとても仲の悪いふたりが、とうとうキレてしまったからだ。
 ふたりは今にも殴り合いの喧嘩を始めそうな勢いだった。
 そこへ、空気の読めないやつが現れた――
<1. by 青色>


 ガラリッ……。
 殺伐とした空気の中、教室のドアを開ける音がした。

 と、同時に派手にずッ転びふりふりロリータ―のスカートがまくれ上がった。
 ひらひらフリルからのぞくいちごのパンツ。すっごく餓鬼っぽい。
「やっばぁい☆ 大遅刻しちゃったぉ☆」
 ……。
 とんでもないヤツがきた。
 空気は読めないわ、いちごのパンツが見えたことに気付いてないわ……。
「あっれっれ〜? みんなぁ、どうしたのぉ?」
 ……。
 見てわからないのか、教室中の皆の目がそう言っている。
 コイツは通称、『ぶり子』 と呼ばれているぶりっこかつ、キャピ☆な痛い子である。おそらく、今日からは『いちご』と呼ばれるのが目に見えてるぞ……。
 怒りの頂点に達した2人の矛先は、空気をブチ壊した『いちご』へと向けられた。
 きょとんと、かわいらしく瞳をうるませてるつもりの『いちご』。怒りに満ちた目を『いちご』に向ける怒り頂点の2人。

 と、そこにまたまた空気が読めない奴が……。
<2. by 猫るんるん>


 現れたのはパキスタン人のムハンマドさん(41)であった。彼は学校の近くのインド料理屋のアルバイト店員だ。
 腕前の方はまだまだ見習いなので、ロクなものは作れず、マンゴージュースとヨーグルトを混ぜたようなやつが唯一の彼の得意レシピであった。
 元々インドとの国境付近に住んでいたのだが、最近治安も悪くなってきたので、平和な日本で一旗揚げようと、故郷のパキスタンを飛び出してきたはいいが、言葉も覚えてこなかった上、持ち金ゼロ、手に職もなく、日本にさえ辿りつけば、誰かがなんとかしてくれるだろうという甘い考えで来日した、他力本願のとんでもない奴であった。
 ところがそういう奴に限って天は蜘蛛の糸を垂らすようにチャンスを恵んでくれるようで、ムハンマドさんは外国人向けの安いユースホステルで知り合ったインド人の紹介で、運良くも今の料理屋でバイトすることになったのだ。
 彼の待ち望んだ、ぬるい生活がここにはあった。彼は一生ここでアルバイトをして暮らすのも悪くないと考えており、彼の人生には自己研さん、自己啓発、上昇志向、野心といったものは皆無であった。
 彼は憎ったらしい作り笑いを浮かべながら何やら言葉を発した。
「あwせdfgtyhじゅこlp; Yamada うぇzxdrcftvgybhyぬjmkp」
 当然何を言っているのかわからない。かろうじて「yamada」とだけ聞きとれる。
 yamada……やまだ……山田!! ……山田に用事があるのだろうか?
 とにかくKYであることに間違いはない。

 そこへさらに空気を読めないどころの騒ぎではない人物が現れた。
<3. by NIGHTRAIN>


“ドガガガガガガガガッ!!”
「きゃあっ!」
 『いちご』が一番に声を上げた。
「yamada……」
 ムハンマドは驚いたように口をあんぐりと開けている。
「地獄へ堕ちろ……俺(堕天使)のように……」
 彼は山田 代(やまだ しろ)32歳。自分のことを堕天使と思い込んでいる痛いヤツだ。
 なにを血迷ったのか、かなり大きめのライフルをケンカをした生徒を含め、教室にいる人全員へと連射している。
「ちょっとぉ、やめてよねっ! 大事なお洋服が汚れちゃうじゃないのよぉっ☆」
 ムハンマドの言っていた「やまだ」とは、この代のことであったようだ。
「あwsdrftgyふjこl」
 とだけ言って、ムハンマドは代へと歩み寄る。
“ズガンッ”
「俺に近寄るな、清らかな天使よ。お前まで堕天に染まってしまう」
 撃ち抜かれたムハンマドはその場に倒れ込んだ。
「すまないな、弟子よ」
「きゃあーっ!!!」
 そうさけんだ『いちご』を、代はギロリと睨みつける。
「うるさいぞ。お前は……天使の資格など無い。……Go to hell」
“ズガンッ”
「あ〜ん、やられちゃった☆」
 いかにもわざとらしく、『いちご』はふらりと後ろへよろめいた。
 弾は綺麗にかわした様子。
 ――もともとケンカしていた二人は、今や次々と来る変質者に怯え、2人そろって震えていた。周りの人も、きっともう仲直り出来るだろうと思った……その時!

 この世でもっともKYな、『アイツ』がやってきたのだ!
“ガラララッ!!”
 勢いよくドアが開いた。
<4. by 幻山 未来>


 それにしても、いったいなにをもって「空気が読めない」というのだろうか?
 また、空気が読めないことは、それほどまでに悪いことなのだろうか?
 我々は、空気が読めないことに対して、いささかネガティブなイメージを抱きがちなのではなかろうか?
 そう、空気を読まないことは、ときとして平和をもたらすことがあるのだ!
 この世でもっともKYな『アイツ』とは、後光がとてもまぶしい通称ミスター・ホトケであった。
 この戦場と化した教室の中にあって、ありがたき姿のミスター・ホトケはあきらかに場違いな存在であった。
 だが、場違いな存在であるからこそ、ミスター・ホトケのありがたみは倍増されるのだ!
「ありがたや〜」
 教室の中にいる者がすべて、ひざまずいて両手をあわせてしまった。
 山田代ですら、ライフルを捨ててミスター・ホトケの前にひざまずいている。
 それはいかにも、地獄に現れた仏のごとく、空気を読まない存在ミスター・ホトケであった。
 しかし、地獄で会った仏だからこそ、ありがたさが何倍にも増すのである。
 こうして、殺伐とした雰囲気は教室の中から消え去ってしまった。

 ミスター・ホトケは倒れたムハンマドさんに手をかざすと、ムハンマドさんは何事もなかったように起きあがった。いやそれどころか、ムハンマドさんは日本語がペラペラになっていた!
「おお、ワタシ、日本語使えるネ! これでもう不便しないネ! ありがたや〜」
 ムハンマドさんはイスラム教徒であったが、この日を境にミスター・ホトケの信者になった。

 ところが、ここへさらに、空気を読めない者が登場した…………。
<5. by 青色>


 教室のドアを戦車がぶち破った。
 すさまじい音とともに、砂煙が教室中をたちこめた。
「げほぉげほっげほぉぉぉぉぉっごほごほごほっっっ」
 すさまじくむせる山田代。むせたと思ったらキレ始める。
「おい、テメェ、この戦車野郎! テンメェ、俺様に歯向かうってのか? あああん!? あん? あああああぁぁん!?」 
 次第に暴れ始める山田代。
 それをムハンマドは抑える。
「落ち着くネ! ワタシの特性カレー食べるといいネ!」
 と、正体不明なカレーらしきものを山田代に差し出す。
 パキスタン人なのに……カレーなのか。
「んだと!? オラァァ! その糞みてぇなモンはなんだ!? 黒こげ野郎! 俺に糞を食えってのか!?」
 やばい……、これは手に負えない。
 そんな空気でミスター・ホトケの頭がまぶゆいほどに照り輝きだす。
「みんな、静まれぇ!」
 山田代はハッとし土下座をする。
 ムハンマドは、カレーを糞の形に組み替えている。
 『いちご』はと言うと、「いやん、眩しいぃ」と目を少女漫画風に抑えている。
 そんな中、戦車がかぱっと開いた。その中から出てきたのは……。

 頭に奇妙な触覚をはやした……宇宙人!? しかし、なぜに戦車で!?
 そこは普通UFOだろ! とツッコミたいところで……。
 ジッとジッパーの音がしたかと思うと……ええええ!? 宇宙人の中からごついおっさんがでてきたぁ!! 意味がわからない!!
 しかも、体臭がキツすぎる……。冒頭で教室内で言い争っていた仲の悪い二人はというと……、顔の形相がやばい☆
「ッテメェラ!! 俺らの喧嘩をよくも邪魔しやがったな……!」
 2人の顔はなにをしてもいい……いや、何をされてもおかしくないオーラを放っている。
 1人は、『いちご』とムハンマドに襲いかかる! もう1人は、山田代とミスター・ホトケに襲いかかる。

 そんな中、空気の読めない奴が……!
<6. by 猫るんるん>


「うるせぇな……眠れねえじゃねえか……」
 教卓の上で丸まっていたアメリカンショートヘアの猫が、しゃべった。
「猫がっ、しゃべっ……!?」
「きゃあああああああっ! 吾朗くうううううん〜〜!!」
 『いちご』は、猫に一目散。
「どこいってたのぉおおお!? 心配してたんだよぉおおお!!」
「くるなっ! こっち、くんじゃねええええ!」
「ああああああああぁ!?」
 山田代が、頭を抱えて絶叫している。
「猫に悪魔が憑いている!? 即刻成敗!!」
「てめえの相手は俺だろうが! ゴラァアアアアアアアア!」
「あの猫は……! ワタシがカレーに入れようとした鯖を盗んだ……!?」
「逃げんじゃねえ! この、悪趣味女があああああっ!」
「吾朗くううううん! どーこー!?!?」
「…………猫」
 ごついおっさんは、ロッカーの隅に避難した猫に一言、言った。
「…………不憫な名前をつけられたな」
「“吾朗”って、元カレの名前なんだぜ?」

 そんな中、さらに手に負えない奴が……!
 喜劇はさらに、混乱の渦へ巻き込まれる――。
<7. by 闇夜>


 がらんとな。
 そんなおっさんくせえ声をあげながらスカートを履いた、どこからどう見ても男顔で、普通にしていたらイケメンが中に入ってきた。ああ何かすげえめんどくせえ。
「やあ! 私は柳生レンジャーのピンクだ!ムハンマドさんはどこだね。不法滞在者としてね、少しお話を聞きたいんだよね」
 ねーよ。まずお前がねーよ。
 ムハンマドさんは私が入力できないような言葉を言いながら柳生レンジャーのピンクさんをビンタしました。あら修羅場。もちろん私は入力できません。できるわけねーよ。翻訳とかじゃねぇんだよ。
「あぁ君か、この喧嘩をしている健全な男子生徒に鼻血を出させたのは。セクハラとして逮捕しよう」
 その時クラス中の皆は思った。二つな。
 ――ソイツ(いちご)を逮捕してくれてあんがとう! ピンク!
 ――まずお前も逮捕されるべきだけどな!

 しかし、ミスターホトケは言いました。
「まだここには……来ていない奴がいる」
 ……と。
<8. by ひよこ>


「どうしました〜? あ〜……、ずいぶん散らかしたみたいだね〜。え〜と……、何人だ? とりあえずひとりずつ話聞くから。なんか身分証明できるものある?」
 さすがに騒ぎが大きくなってきたので、校長のジェームズ・フィッツジェラルドが近所の派出所に通報したのだった。
 現れたのは夜勤明けの田中強巡査(37)であった。夜勤を何事もなく終え、『今日も一日平和でした。』と報告書に書き、そばでも食べて帰って寝ようとしたところを、校長の電話で呼び出されたのだ。
「あれ? 君、インド料理屋チャパッカのムハンマド君だよね? 君さ、今、確かビザ切れてて滞在申請も出してないから不法滞在になってるんだよね……。まいったな〜、めんどくさいけどあとでうちまで来てもらうから、ちょっとそこで待っててね」
「亜w背dfrgtyhじこlp;@:!!」
「あ〜、はいはい、わかったから」
「え〜と、それから、そこの君、この学校の生徒? それどう見ても制服じゃないもんね。どうでもいいけどさ、パンツ丸見えだから学校に来る時くらいはちゃんと制服着たほうがいいよ? この辺はあんまりないけど、未成年がパンツ見せて歩いてたら変質者に襲われることだってあるんだから」
 いちごはただただオロオロきゃぴりんこ☆×2するばかりであった。
「あとは……え〜と、それ消してくれるかな?まぶしいよ。一応こっちもまじめに仕事してんだからさ、おまわりナメてる? あと、そこの君、とりあえず服きよっか? それから〜……、あ、だめじゃな〜い、そんなの持ってちゃ。どうせおもちゃの鉄砲なんだろうけど、そういうのもこういう時には結構問題になったりするからね? とりあえず床に置いて。あとはスカートの君、なにしてんの? とりあえずその少女の手を離しなさい。まかりまちがうと痴漢の現行犯で逮捕されるよ? それから〜……、のら猫か、……(あ〜めんどくせw)」
 立て続けに、ホトケ、ごついおっさん(ノーマルスーツを脱いだので全裸)、山田、柳生ピンクをたしなめると、いよいよやる気がなくなってきた田中はめんどくさそうに手帳を取り出し、メモの準備を始めた。
 学校にさまよいこんだ不審者ひとりを(恐らく校庭で奇声をあげている程度だろうとタカをくくっていたのだが)追い払う程度のはずが、まさかこんなにめんどくさい現場になっているとは思ってもいなかったのだ。


 そこへ、遂にKYオブKYの“奴ら”が満を持して登場したのだった……!!
<9. by NIGHTRAIN>


「ほら、来てしまう。奴らが……」
 ホトケが、神妙な顔をして言う。

「それは誰なのかしらぁ☆」
 ぶり子改め『いちご』が、本人はかわいいと思っているのだが、痛々しいだけである口調で応じる。田中強巡査に注意されたにも関わらず、相変わらずいちごぱんつが見えている。
「ソレは誰アルか!?」
 パキスタン人のムハンマドさん(41)は、日本語がしゃべれるようになったはずだが、唐突にしゃべれなくなったり、また中途半端な語尾になったりと、忙しい様子で叫ぶ。そういえば、山田に撃たれたはずだったが、よく見ると胸の部分が染みている。どうやら水鉄砲だったらしい。(ホトケが回復させたように見せたのは一種のブラフであったらしい。)
「これ以上、俺の負の領域“ソウルソサエティ”に入るな……これ以上は罪の十字架を背負いきれない……」
 シリアスな表情と、ライフル(水鉄砲)を構えた姿勢を崩さない山田 代(やまだ しろ)。
「誰だ」「誰だ」「誰だ」
 立て続けに、三人が問いかける。第一話で喧嘩していた男子生徒2名(名前さえつけられていない)と、そして猫の吾朗(名前はちゃんとつけられている)である。もはや、脇役以外の何者でもない状態になりつつある。
「空のかなたに踊る影ぇー!」
 そして、誰だコールの後にこう続けざるを得なかったであろう、戦車から出てきた宇宙人(ノーマルスーツを脱いだので全裸)。
「それは誰かね?」
 このカオスな状況を納めようと、校長のジェームズ・フィッツジェラルドが教室へ飛び込み、威厳をこめて発言する。鶴の一声である、とニンマリした満足したそのとき、
「本官にも詳しい事情を説明していただこうか」
 もしかしたら、一番まともかもしれないが、この場においては逆に空気の読めないキャラの田中強巡査がきつく質問する。
「もしかして、ピンクさん。レンジャーだから、他に仲間がいるのかしらぁ☆」
 無邪気ないちごに対し、柳生レンジャーのミスターピンクが悲しい事実を伝えた。
「私はレンジャーと言っても、友達は居ないので、5人どころかピンク1人なのだが……」
 誰も聞いていないのに、友だちいない宣言をかます、ミスターピンク。
「大丈夫よ☆ 友だち100人できるわよ」
 にっこりぶりっ子をかました『いちご』。相変わらず、パンツが見えていた。
「ここにだって、ほら、11人いるわぁ☆ この調子で行けば100人も簡単よ☆」
 そういうと、「友だち100人できるかな♪」と歌い出し、「友だち100人できるかな♪ 100人で食べたいな♪ 富士山の上で〜おにぎりを♪ ……あれ、1人すでにハブられてる?」と、重大な事実に気づいてしまい、表情を暗くした。
「ミスターピンクさん。社会ってそんなものなの。101人いたら、1人くらいはみ出す人が出て来るものなの……」
 そう呟くと、なぜか壁際にかけられていたブランコにかける紅一点。(後でわかったことだが、ネコの吾郎の寝床であった。)
「……いつか君はブランコにゆられてぇ〜いたいけな目を少しふせてぇ〜哀しい顔でうつむいた〜わたしはひとりで平気なの……」
 BUMP OF CHICKENのアルエを歌い、フォローする気はゼロであるらしかった。ついでに、BUMP OF CHICKENが出したファイナルファンタジーの主題化の名も、ゼロであるらしかった。

「……さて、そんなことはともかく、いったい、来ていないってのは誰なんだね?」
 その空気をぶち破ったのは、耐え切れなくなったミスターピンクだった。
 そして、ホトケは言う。くくく、とくぐもった笑いをこめて。
「それは……われわれだ」
 言い放ち、ガバッと顔の皮を剥ぐ!
 ホトケだと思っていた顔は、激安の殿堂ドンキホーテで購入した『大仏マスク』(\2,100 税込)であった。
 その下に現れたのは――!

 そう、ヤツであった。
 (●´ω`●) ←ヤツこと、R*STORYの管理人あっきぃ。(参考URL http://ramify-story.com/ )

 数々の作品で空気を読めなかった書き手が出してしまい、その度に、作品の流れをぶった切り、リレーのバトンを叩き落してきた。そして、あまりの内輪ネタ故に新規参入者を妨げる恐れがあると言われることも多々あった。また、噂によると、ソレを恐れて最近は姿をくらましているとされていると、特筆しておく。

 果たして、どうなるのか。そして、この“ホトケ”(※注意、元ホトケ)だけではなかった。
 ホトケがマスクを脱ぐと同時に、窓ガラスを蹴破り、扉をぶち破り、次々と様々な顔ぶれが飛び込んで来る。その数、二桁。
 まさに、本当の意味で空気の読めないキャラたちであるが、これを書いている私はまったく反省していない。
<10. by よっしゅ>


 そう、”奴ら”とは、R*STORYの住人率いるあっきぃのことであった!
 窓や扉をぶち破って入ってきた沢山のR*STORYの住人は、そこに集まっているおかしな人達(いちご&ムハンマド&山田代&宇宙人(ごついおっさん)&猫の吾朗&柳生レンジャーのピンク&校長&田中強巡査)をぐるりと見渡す。
「あなたたちは誰なのっ!?」 
 『いちご』が台詞を読むようにして甲高い声を上げた。
「私たちはR*STORYの住人さ。みんながみんな、この! あっきぃをしたっているのだ!!」
 訳の分からない威張り方をしながら、代表らしい1人が出てくる。
「名のない天使よ。お前達に、俺が名前をつけてやろう……」
「名前、ですカ? ワタシもつけるネ!!」
 山田とムハンマドが住人達をひとりひとり、じとじとと見つめていった。
「アナタはマイケル、こっちはボブ、ネ! どうですカ??」
「いいわけねーだろ」
 田中巡査がげしっとムハンマドの頭にチョップを喰らわす。
「というより、不法侵入者だらけじゃねぇか! 訴えるぞ!」
 そう言いながら巡査が後ろをふり向いた、その時。


(●´ω`●) どんっ

 あっきぃの顔が、そこにはあった。

(●´ω`●)「逃げられると、思ったのかな?」

「……」
 田中巡査は無言でその場に両膝をついた。

“ドカアァァァンッ”

 どこかで、大きな爆発音が響く。
「きゃあっ!?」←『いちご』。
「にゃあっ!?」←『いちご』に勢いよく首を絞められた吾朗。
「う、うわあああああ」
 ケンカしていた男子生徒2人は、ぎゅっと手を握り合って、窓の外をみた。
(い、一体なにがおこっているんだ!?)
 そして――その爆発した場所から、気球のような者が飛んできた。
<11. by 幻山 未来>


 R*STORYロケットであった……。
 ロケットにはあっきぃの顔 (●´ω`●) が どんと描かれている。
 その周りには、全ユーザーの名前が事細かく書かれているではないか。しかしなぜロケットが!?

 そのとたん……あっきぃの顔がすさまじい勢いで人間の形に……!
 あっきぃは進化したのである。
「ふふはああああ♪ あっきぃの真の姿見たか!」
 そう言っていつの間にかロケットに乗っている。
「みなのものっ! ロケットに乗るんだー!」
 え? なんで? R*STORYユーザー全員の目がそう言っている。それを感じ取ったのかあっきぃさん。
「ぐっ、とりあえず乗るんだ!」
 とりあえずR*STORYユーザーは全員ロケットに乗った。すさまじい煙とともにR*STORYユーザーたちは……宇宙へと旅立ったのであった。
<12. by 猫るんるん>


「カオスなリレー作品つくろうぜwwwwwwww」
 宇宙へと旅立ったロケットの中で、誰かが言った。
「ところであっきぃ、宇宙へ出たはいいけど、食料とかは大丈夫なの?」
 別のR*Story住人が、リレー小説の提案をスルーするかのごとく、あっきぃに訊ねた。
「問題ないじぇ! ほら、デスソースをたっぷり持ってきたんだじぇ!」
 ロケットの食料庫には大量のデスソース、デスソース。それ以外のものは見事になかった。
 それを見て、魂が抜けたように唖然とするR*Story住人たち。ところが、一部の住人は逆にハイテンションとなった。
「おいみんな、デスソース飲んでカオスなリレー小説つくろうぜwwwwwwwwwwww」
 ああ、はたして一体この先どうなるのやら……
<13. by 青色>


「デスソースはもうたくさんだっ!」
 無重力のロケットの中、少年の大きな声までもが無重力にフワフワ浮くかのごとく響いた。

 さて、今の言葉を発したのは、他でもない、なおき少年(14)であった。
 なおき少年はR*Storyにデスソースを布教した張本人であったが、しかし本人はもはやデスソースのネタに飽き飽きしていたのであった。
 なおき少年は“デスソースのプロ”という称号を与えられた。しかし当の本人はすでにプロの座を退きたいと思っていた。それはいかにも、ひょんなことからプロデビューを果たしたミュージシャンが、自分の意思とはかけ離れたところで大人気を博し、おかげでプロダクション会社から「早く新曲をつくれ。なんでもいいから曲をかけ」とせがまれて無理やり曲をかかされて、ただ会社の金もうけのためだけに曲をつくらされているうちに「ああ、こんなことならプロデビューするんじゃなかったなぁ。お気楽なストリート時代に戻りたいなぁ」とプロ引退を考えるミュージシャンのようであった。

 だから、なおきは持ってきたのです! デスソースに代わる、新たなネタを!
 はたして、その新ネタとはなにか!?
<14. by 青色>


「これで、みんな遊べるし、新しいデスソースのネタにもなる。」
 なおきは持ってきた。新たなネタを……それは、デスワビアンルーレット。
 まあ、例として、ここに15枚のクラッカーがあるとしよう。
 そのクラッカーにデスソースを挟む、これは2個作る。そして、大量なわさびをクラッカーに挟む、これは、3枚作る。そして、案外マッチするあんこを挟む。これは10枚作る!
 それを、青色さんに渡し、不正行為がないように猫るんるんが見張る。それをR*Storyの住人に配る。そうすれば、みんなのリアクションが見れる!
「面白い!! デスソースにあたったやつは、そいつの、地獄の叫びが待っているだろ〜ウヒヒヒヒヒ」
 なおきの変な笑い声が宇宙空間に響く。
 しかし、なおきは知らなかった。あの二人の恐怖を……
 さあ、デスワビアンルーレットのデスソースにあたったのは……
<15. by 奈尾鬼>


「ぎゃあああああああああああああああああああああ」
 ある一人の男の叫びが宇宙に響く。
「俺にデスソースがあああああああああああああ!!」
 この叫び男の名前はなおき。
 なおき少年はR*Storyにデスソースを布教した張本人であった。
 デスソースの代わりにデスワビアンルーレットを持ってきて、デスソースを他の人間に食べさせるために生み出したんだが……デスワビアンルーレットのデスソースの餌食になったのは……この男、わけのわからないルーレットを提案した本人であった。
 その姿を見る二人……青色さんと、猫るんるんが高らかに笑う。
「仕組まれたああああああ!」
 この男(なおき)どこにいってもデスソースの餌食になる、運命なのだろうか?
 なおきは苦しさのあまり、宇宙に飛び出してしまった。
<16. by 奈尾鬼>


 ――しかし。彼は生きていた。
「なおきよ、あなたはまだ死ぬべき存在ではありません」
 なおきの脳裏に、声が響いた。
「だ……れ……?」
 真空の宇宙で薄れゆく意識の中、なおきはなんとか謎の声に応じた。
「私は天使ガブリエル」
「天使……?」
「そうです。私は天使ガブリエルです」
「天使が、僕になんの用?」
「神から言伝(ことづて)を預かってまいりました。デスソースの神から、あなたに」
 ――なおきは神の啓示を受け取った!!

 神の啓示にはこう書かれていた。

『なおきよ、汝にあたえられし定めを果たさぬまま、死ぬとはなんたることか。おお情けない。この世にデスソースを広めることこそが、使徒である汝に与えられた宿命である。それを果たすことなく死ぬことは許さん。今すぐに新しい命を与えるから、地球を、いや全宇宙をデスソースのColorで染めてこいバカ野郎』

 おめでとう! なおきは無事に生還した!!
<17. by 青色>


 なおきが帰ってきた。宇宙船のドアをノックしているらしい。
 青色さんと猫るんるんは、その報告を聞きき、宇宙船内の皆をあつめながら、「みんなで一斉に食べようぜ」と呼びかけていく。先にそうしておかないと、怒り狂ったなおきが何をするかわからなかったからだ。

 一体だれがデスクラッカーを食べるのか。
 2人はにっこり笑いながらクラッカーを配っていった。
 このゲーム。デスクラッカーが1枚(あたると、死に等しい)と、ワサビクラッカーが3枚(きついけど、耐えられないわけじゃない)。そして、安全なあんこクラッカーが10枚。
「ぎゃあああああああああああああああああああああ」
 広い宇宙のなか、一機のロケットから、とても大きな悲鳴が響いた。
 声の主は……どうやらデスクラッカーを食べてしまったらしい。
「あーあ、ドンマイ! でも、ルール上、全部食べなきゃだから。がんばっ」
「ドンマイ、ドンマーイ!」
 そう言いながらニンマリと笑っている青色さんと、猫るんるん。2人は、あんこクラッカーをむしゃむしゃとほおばっていた。
 そうだったのだ。自分たちの分だけ安全パイを残しておいたのだっ!!
「んがっ、つーんとくるぅ〜っ!!」
 一方、ワビクラッカーを食べたR住人は、ごくごくと水を飲んでいる。
「うら、うら、た〜べ〜ろ〜! 目指せ、完食!」
<18. by 幻山 未来>


 デスソース入りのクラッカーをあてたのは、モゼバルレニシコスケテ星からやってきた山本くん(15)でした。彼こそが、あのカオスな教室に宇宙船を突撃させた張本人でした。
 R*STORY住人をただ作品に登場させたかっただけという、迷惑きわまりない操舵手です。
 山本くんはしばらくの間デスソースのからさにヒィヒィ言っていましたが、「これは使える!!」と満面の笑みを浮かべました。
「このデスワビアンルーレットを、ぜひとも我が故郷モゼバルレニシコスケテ星でも広めたい!」
 山本くんは眼を輝かせて言いました。その山本くんに、いつの間にか機内に戻っていたなおき少年はこう言いました。
「僕はデスソースの神から布教の義を授かった使徒なおき。ぜひともそのモゼバルレニシコスケテ星へ案内してくれ」
「うん、いいよ」
 あっさり承諾。
 しかし、そのためには、この宇宙船の装備では行けません。次の惑星で別の宇宙船をチャーターし、なおき少年と山本くんはそちらに乗り換えました。
 モゼバルレニシコスケテ星行きの宇宙船です。
「なおきよぉ、元気でやれよー!」
「デスソースを全宇宙に布教してくるんだぞー!」
 R*STORYの住人たちは、万歳三唱でなおき少年を見送りました。
<19. by 青色>


 山本君のチャーターした宇宙船に乗り換え、マゼバルレニシコスケテ星に向かうなおき少年。
 宇宙船の中には、以下の面々がいた。

・山本君:山本 瑠宇駆(やまもと るうく)(15)
(砂漠の星、モゼバルレニシコスケテ星で農家の養子として暮らしていたが、ひょんなことから帯一と共に旅立つことに。名前の由来は”瑠璃色の宇宙を駆けるような人間になって欲しい”らしい。)
・山本君の召使ロボット:いろは2−ほ2(製造年月日:平成17年7月 東芝製)
(ゴミ箱をひっくり返して、キャタピラをつけたようないでたちで、「クピパペプペポ」と可愛らしい声で騒ぐ愛らしいロボット。ルンバ並みに使える。)
・山本君の通訳ロボット:ちりぬ3−るを(製造年月日:平成18年10月 日立製)
(金色のボディで額に「百式」と書かれているが、かんじんな時に使えないガラクタ。なにか困ったら「ご主人様ご主人様」と騒ぎ、自分のミスは全ていろは2−ほ2のせいにするダメな奴。)
・パイロットで船長の宇宙運び屋:伴 候(はん そうろう)(33)
(借金で首がまわらず、宇宙マフィアのボスでナメクジの邪婆帽子さん(55)に身柄を拘束されそうになったところ、山本君と帯一に運び屋として雇われた。)
・伴の友達のけむくじゃらのデカい生き物:宙 馬鹿(ちゅう ばか)(56)
(この生き物は「ヴォーン」しか言えないので伴には宇宙の馬鹿、宙 馬鹿と呼ばれている。宙 馬鹿の種族は寿命が長いので、人間で言うと25歳くらい。)
・うさんくさいサムライじじい:毛伸 帯一(けのび おびいち)(65)
(ボケはじめているのか、よく「私は理力をもちいてうんたらかんたら…」とのたまっている。腰には刀身がLEDで光る「光の刀」を差している。光ることに特に意味はない。ただのおしゃれ。)

 山本君によると、今銀河系は未曽有の危機であるらしい。
 暗黒皇帝と、その部下の「蛇明日 平太」(だあす べいた)(45)率いる帝国軍が、銀河系の星々を征服しようとしているというから、大変迷惑な話である。
 蛇明日平太監督のもと、工事を進めている、帝国軍の秘密兵器「デススター」が完成すると、いよいよ銀河系の星々は粉々に破壊されてしまい、たちうちできなくなるので、帝国軍に反旗を翻した同盟軍が、その昔大変立派なサムライであった、
 帯一に助けを求めたのがはじまりであった。

 帯一じいさんは、山本君の故郷、モゼバルレニシコスケテ星で隠居生活を送っていたが、そこへ同盟軍の書状を携えた2体の召使ロボットが辿りついたのだった。
 しかし宇宙船の着陸に失敗したロボット2体は、ホームレスの集団にとっつかまり、ヤミ市でひと山いくらで売られていた所を山本君のおじさん夫妻に買われたのだった。そしてロボットを追ってきた帝国軍によって、山本君のおじさんとおばさんは焼き殺され、すんでのところを帯一じいさんに救われた山本君は、ロボット2体を引き連れ、伴船長を雇い、故郷の星を飛び出してきたのだ。

 R*STORY宇宙船に乗っていたのは、故郷ひいては銀河系すべてを救う仲間を集めるためだったのである!
 しかし、それはひょんなことで達成されたばかりか、武器までもが手に入った。
 デスソースという究極兵器を手に入れ、狂喜乱舞する山本君は、故郷のモゼバルレニシコスケテ星を救うため、デスソース入り爆弾をデススターにぶちこみ、帝国軍の暴挙を打ち砕きたいのだと言う。「毒を以て毒を制す」がごとく、「デスソースを以てデススターを制す」であり、多少ややこしい話である。
 そのために、同盟軍の秘密基地にデスソースを持ち帰り、なおきを招待したいのだということで、一行はR*STORYの面々が乗ったロケットを後にした……までが今までの粗筋である。

 伴船長の操縦する「千年はやぶさ号」は順調に航海を続けていた。
 キャビンでは、(ちりぬ3−るを)が宙馬鹿と将棋をさしている。また、その将棋をさしている目の前では、山本君が光の刀を振りまわして剣道の練習をしている。
 その時であった。すさまじい衝撃音と共に船体がけたたましく揺れた。
「どうしたってんだ? まさか帝国軍の連中か?!」
 伴船長はバックミラーを見ると、「千年はやぶさ号」の後ろから帝国軍の巨大戦艦「星の破壊者号」が追いかけてきていた。
「まずいぞ! 宙馬鹿! いそいでワープの準備だ!」
「ヴォーン!」
 言葉が通じているのか通じていないのかわからないが、宙馬鹿は副操縦席についた。
 しかし、スイッチを押しても一向にワープをする気配がない。かなりオンボロ船なので故障しているのだろうか? 遂に宙馬鹿は癇癪を起し始め、操縦席の計器類をがんがん叩きはじめた。
「またかよ……」
「困ったのう……」
 山本君と帯一じいさんはいつものことか、というリアクションだ。
(いろは2−ほ2)はピコポコ騒ぎ立て、メンテナンスエリアに向かい、(ちりぬ3−るを)は「ああご主人様、どうしましょう…!」とオロオロしている。
 なおきはデスソースを握りしめた。
「よし! あそこに逃げ込もう! あそこならデカイ奴らの船は追ってこれないだろう!」
 伴船長は、五キロ先に小惑星帯を見つけると、千年はやぶさ号を素晴らしいドラテクで向かわせた。
 ちなみに「星の破壊者号」に乗っかって山本君を追っかけてきている「蛇明日 平太」は、実は仮の名で、本名は山本六十六(やまもと むそろく)といい、その昔帯一の弟子として共に帝国軍と戦っていた山本君の父親であった。
 彼は立派なサムライで腕の方は確かであったが、ハートが貧弱であった。
 大事な護衛任務中に護衛相手の女に惚れてしまい、仕事を放棄して女にうつつを抜かし、挙句、暗黒皇帝に言葉巧みに騙されて、結果としてフォースの暗黒面に堕ちたのであった。
 また、どうでもいい話であるが、山本六十六は、幼少期は母子家庭で貧乏人だったため、親子そろって奴隷として過ごし、いつも穴のあいたパンツから金○マをはみ出させていたので、「穴金太郎」(あなきんたろう)、略して「穴金」(あなきん)と呼ばれていた。
 師匠であった帯一でさえもその名で呼んでいたため、2人の間には確執が生まれ、ダークサイドに堕ちた一つの要因とも考えられる。
<20. by NIGHTARAIN>


「ヴォー! ヴォー!」
 宙馬鹿が叫んだ。どうやら「星の破壊者号」がミサイルを放ったようだ。コックピットの計器がピィピィと警告音を発している。
「落ち着け! ミノフスキー粒子を散布だ!」
 操舵中の伴船長は、横で機械をいじっている宙馬鹿にそう言った。
 しかし宙馬鹿はさらに「ヴォー! ヴォー!」と叫ぶばかり。
「え? なんだって? ミノフスキー粒子がない?」
「ヴォー!」
 どうやら、モゼバルレニシコスケテ星を出航する際に、ミノフスキー粒子の補充を忘れていたご様子。
「なんてこったい」
 伴船長は自分のしでかした失態に、頭をかかえた。舵から両手を離して、頭をかかえた。
 なにせ帝国のミサイルは「世界一ィィィ!」の技術を誇る日本の某メーカーがつくっているから、ミノフスキー粒子なしに回避することは不可能だった。

 ずぅ〜〜ん!
 大きく揺れる「千年はやぶさ号」。どうやらMADE IN JAPANのミサイルがあたったようだ。だがさすがは平和大国ニッポンのミサイル。エンジンだけにダメージをあたえる不殺(ころさず)のミサイルゆえに、「千年はやぶさ号」はエンジンだけが損傷して、他の部分は無傷だった。
 けれど、エンジンに傷を負った船は、もはや航行不能となった。
 そして、「星の破壊者号」につかまってしまった――はたして、一行の運命やいかに!?
<21. by 青色>


 星の破壊者号のなかに連れて行かれる前に、目隠しをされた。
 蛇明日 平太は檻の中に、その者たちを閉じ込めてしまった! と思いきや……

「まったく貴様ら、日本製のミサイルは高いんだ。いいか? 今からお前らにはアレと同等のミサイルをどこかから奪い取って来てもらう。そしたら、逃がしてやろう」
 蛇明日がそう漠然とした指示を出すと、山本るうく君は大喜びした。
「やっふーい!! 逃げられるぜ!! ひゃっはー!」
「いや、お前はここにいろ」
「え! なんで俺だけ……」
「よし、お前ら、こっちへ一人ずつこい」
 そして、ロボット、運び屋、おびいち達は、腕にブレスレットを掛けられた。
「さあ、行ってこい!! そしてミサイルを盗め!!」
「そ、そんなの無理だ〜!」
 と同時に、宇宙空間に放り込まれた。
(い、息ができない……)
 みんな、気を失った。

 ――その頃。
「よお、息子よ」
「……! まさか!」
「そうだ、わしはお前の父、山本六十六だよ」
 るうくは驚き、父親がなぜこんなことをしているのかと考えた。
(父さん……もしやリストラの腹いせに、こんなSFごっこをしているのか!?)
 そうして、少年ながらに大人の対応をした。
「そうか、どうして僕だけをここに残したのか、よく分かったよ」
「そうだ……息子よ」
「ん?」
「また一緒に、暮らさないか?」
「父さん…」
 と言う訳で、さっき地球にミサイルを取りに行った一同を見捨て、父子は故郷へ帰還した。
<22. by 松竹梅>


 親子が感動の再開を果たし、宇宙船「星の破壊者号」を小型の脱出ポッドで旅立っていった後、
「え、あれ? 俺はどうすれば……?」
 ひとり放置プレイを食らっていたなおき少年は、どうするべきか思案した。
 そうしてふと、自らの使命を思い出した。
「デスソースを布教させないと……」
 そうとなれば、目的地などどこでも良かった。
 ただがむしゃらに操作方法のわからない「星の破壊者号」を操縦し、ゲームセンターで鳴らした腕前を実戦で発揮した。
 そうして、大気圏に突入。
 空気の流れを読めない、文字通り「空気が読めない」なおきは、ただひたすらに着地することだけを考えた。そうして、ある学校のグラウンドが目についた。グラウンドに窓を向けてそびえる校舎。そして、その一画の教室。
 見覚えのあるそこは――……。
<23. by よっしゅ>


 一方、地上ではあの妙なロケットが旅立ち、静まりかえった教室の中。
 ケンカをしていた男子生徒、健(けん)と海斗(かいと)はお互い顔を真っ赤にして、握っていた手を離した。
 両者共に、おかしな面子に怯えていたのか、手が汗ばんでいる。
「あ、え、えっと……なんか、ごめんな」
「ああ、うん。こっちこそ……」
「ああっ! ワタシ、仕事があるのデシタ!! それでは、失礼させていただくネ!」
 雰囲気をバリンッとぶちこわして、ムハンマドは教室を去っていった。
「あ〜ん、もう、なんなの? 次から次へと。私は正式に“生徒”なのにぃ☆」
 『いちご』の言葉を聞き、田中巡査はハッとして背筋を伸ばす。
「そうか……! ここは、学校だったのか」
「お前なぁ……」
(いままで気づいてなかったのかよ)←吾朗くん心の声
「失礼しやしたー!」
 そうして、田中巡査はビシッと敬礼してから、教室を出た。
 そして、残されたカオスメンバーは無言で沈黙を破らずにいたが、教室全体がざわめき出す。
「なあ、海斗。俺思うんだけどさ」
 ふいに、健がきりだした。
「なんだ?」
「……もう授業、始まってね?」
 その一言で、その場にいたクラスメート、そしてカオスなメンバー全員がドアの方を見る。
 宇宙人の戦車によってこなごなに壊されたドア。その前の廊下には、眉間にしわを寄せた、先生が立っていた。
「……何をしているんだ」
「きゃあっ☆ 先生がご乱心だお!」
「それはお前達だろっ!! このぐちゃぐちゃな教室を、なんとかしろー!!!」
 それは、いつも温厚な、国語の早河先生が――ブチぎれた瞬間だった。
<24. by 幻山 未来>


「そこの不法侵入者! 早く出て行け! まさか、生徒に害を与えたんじゃあるまいな……警察をよぶぞっ!」
「いや、今さっきまで警察いたが」
「俺に言わせてみりゃ、共に落ちてゆく羽と落ち葉が風によって引き裂かれた……(すれ違った)ってとこだな」
 山田と吾朗に言われ、先生は顔を真っ赤にした。
「うるさいうるさいっ、とにかくでてゆけっ!! 警察、警察、110!!!!」
 カオスメンバーは先生の剣幕に負けたのか、はたまた、本当に警察を呼ばれそうになってびびったのかは分からないが、足早に、ずらずらと出て行く。
「んも〜っ、早河センセッ! 怒りすぎですよ〜☆」
「怒りすぎじゃない、この教室を見てみろ……ドアの残骸に、放置された戦車、あげくに、水鉄砲のしみまでついているじゃないか!! ……それに、なんだ桃原。おまえ、大大、大遅刻じゃないかっ、いつまでカバン背負ってるんだ!」
 『いちご』の本名は、桃原香里(ももはらかおり)である。
 いちごはきゃっと悲鳴を上げ、あわててカバンを片付け始めた。
「――たく、なんなんだ、一体。誰が始まりだ」
 先生がボソッと言った言葉に、すっと二つ、手が上がった。
「……!」
「僕たちが、最初にけんかしたのが、悪いんです」
「すみませんでした」
 それは、健と海斗だった。決して彼らは悪くないのだが、なんていい子なんだ……
 ずっと教室にいたクラスメートは、涙ぐんで2人の雄志を見守る。
「……塚本、佐々木、職員室に来い。詳しく聞く。のこる生徒は、この教室をできるかぎり復元すること。いいな」
 そういって、先生と健、海斗は教室を出て行った。

“バリーンッ”
 窓ガラスが割れた。
 今までシンとして後片付けをしていた生徒にとって、とても驚くことである。
 パラパラと、ガラスの破片がこぼれ落ちた。

 ――そう、そこへまた、KYなやつが、現れたのだった……。
「おいおい、ここまでカオスな流れだったってのに、もう終りか? いかれてるぜっ!!」
 だが、不思議と、生徒のみんなは微笑んでいた。カオスリレーはいつまでも、どこかで続いていくのだ。


 ――『カwオwスwリwレwーw』、完。
<25. by 幻山 未来>


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